中国のハイテク大手Tencent(テンセント)は、人工知能(AI)関連のプロダクトをさらに強化する計画だという。アナリストは、同社がメッセージングサービスWeChat(微信)を、AIを活用したスーパーアプリに変える可能性を指摘している。
テンセントの創業者で会長の馬化騰(ポニー・マー)と社長の劉熾平(マーティン・ラウ)を含む経営陣は、3月19日のアナリストを交えた電話会議で、同社のAI戦略を説明した。
テンセントは、すでにAIを用いて主力事業のゲーム分野を強化しており、広告分野でも消費者の行動の分析やターゲティングにAIを役立てている。その結果、同社の2024年第4四半期の売上高は、市場予想を上回る前年同期比11%増の1724億元(約3兆5500億円)を記録し、純利益も前年同期比90%増の513億元(約1兆600億円)に増加した。
テンセントの香港上場株は、投資家が中国のテクノロジー企業のAI技術に期待を寄せる中で、年初から約30%高となっている。同社の経営陣は、GPUの購入などのAI関連の支出の増加によって2025年の設備投資額が売上高の「10%台前半」を占める見通しだと述べている。
同社の競合であるアリババやバイトダンスなども、AI関連の投資を拡大している。アリババは先日、Quark(新夸克)と呼ばれる新たなAIアシスタントを発表したほか、2月には今後の3年間で少なくとも3800億元(約7兆8300億円)をクラウドコンピューティングとAI関連のインフラに投資すると発表した。
そんな中、テンセントは「Yuanbao(元宝)」と呼ばれる独自のAIアシスタントアプリへの注力を進めている。このチャットボットは、自社開発の大規模言語モデル(LLM)の「Hunyuan(混元)」と、DeepSeekの「R1」推論モデルを統合したもので、中国のAI製品を追跡するウェブサイト「aicpb.com」によると、2月に中国で5番目に人気のAIプロダクトになり、月間アクティブユーザー数は1300万人に達していた。
テンセントはまた、2月からWeChatにAIベースの検索機能の導入を開始した。同社のラウ社長は、19日の電話会議で、WeChat向けの専用のAIエージェントの開発を示唆した。
このデジタルアシスタントは、WeChat内の「ミニプログラム」と呼ばれるさまざまな機能に接続できるものだという。ミニプログラムは、ショッピングや航空券の購入、ゲームなどをアプリを離れることなく楽しめる機能で、ラウ社長は、テンセントがこれらの機能と連携するAIエージェントを「容易に構築できる」と述べたが、具体的なリリース時期については明言しなかった。
テンセントのAI事業は、引き続き自社開発のHunyuanモデルと外部のAI製品を組み合わせて推進される見通しという。
同社の最終的な目標は、AIを活用したスーパーアプリの開発かもしれない。香港の調査会社Arete Researchのアナリスト、ショーン・ヤンは「中国のハイテク大手の中で、テンセントはスーパーアプリを実現する最も有力な候補かもしれない」と指摘。
「当社のAI関連の製品は今後ますます増えていくことになる」とラウ社長は述べている。