エル・ヒガンテ岩陰遺跡自体の幅は約36メートル、奥行きは約16メートルを超え、かつて住んでいた人々が過去1万1000年にわたって出した多くのゴミが残っている。ここにはアボカドやヒョウタン、リュウゼツラン、マメ、カボチャなど、2万種以上の植物の断片を含む古代の植物の化石が多く含まれている。科学者たちはこれらのゴミから過去1万年にわたる人々の資源利用と経済パターンの変化について興味深い洞察を得ている。さらに、植物栽培の進化の歴史を研究する上でこれらのゴミは非常に貴重なものでもある。
アボカドの栽培化の過程を深く理解するために、ヴァンデルワーカーら研究チームは、果皮や種子を含む1725個のアボカドの化石を集め、アボカドの形状とサイズの変化を分析した。そして炭素年代測定を行い、56個のアボカドの化石の年代を特定することができ、最も古いものは約1万1000年前にさかのぼれることがわかった。
研究チームは、栽培化される過程でアボカドの果皮が厚く、種は大きくなり、食用部分が増えたことを突き止めた。研究チームによると、これらの変化はより大きな果実を好む人間による栽培化を示しているという。研究チームはまた、栽培化は野生の木を管理することから始まり、やがて最も望ましい特性を持つ果実の種を植えるようになったことを示す証拠も発見した。

アボカドは約40万年前にメキシコ中央部で誕生して以来、興味深い進化を遂げてきた。更新世の大型哺乳類、例えば地上性の巨大なナマケモノやトクソドンなどはアボカドを丸ごと飲み込み、アボカドの種をあちこちに運ぶタクシーのような役割を果たしていた。アボカドは種の運搬を大型動物に頼っていた。そのため1万2500年ほど前にこれらの大型哺乳類が人類の狩猟で、おそらく環境や気候の影響も重なって突然絶滅した際には、アボカドも絶滅の危機に瀕した。だがこの頃には人類はアボカドを食べる楽しみを見出しており、食料としてアボカドの木を管理し、栽培していたため絶滅しなかった可能性が高い。
動物の家畜化と植物の栽培化のプロセスにはどのような違いがあるのだろうか。
「植物の栽培化と動物の家畜化のプロセスは、栽培したり飼ったりする場所や繁殖、餌(水)を人間が管理しなければならないという点で似ている」とヴァンデルワーカーは電子メールで述べた。
すべての植物や動物が栽培・家畜化されているわけではない(よく知られている例として、シマウマは家畜化されていないが、ウマは家畜化されている)。では、栽培・家畜化に適した特徴とはどのようなものだろうか。