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政治

2025.03.20 09:00

トランプのカナダ併合計画 実行すれば米国は「乗っ取られる」

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歴史的な経緯を振りかえれば、この問題をめぐる厄介さはいっそう次元が上がる。米独立戦争中、カナダの人々は英国側についた。米国の愛国者たちが独立を求めて血を流した一方、北の隣人たちは英国王に忠誠を誓い続けた。この事実はブリティッシュ・コロンビア州やプリンス・エドワード島といった地名に刻まれている。米国が勝利したのち、独立に反対した王党派の人々は北へと逃れた。合衆国の建国の理念を否定した人々の子孫が、米国の共和政治体制に大きな影響力を持つようになると考えれば、これほどの歴史の皮肉があろうか。

文化的な背景をも検討材料に含めると、問題は一段と複雑になる。フランス語話者の人口が多いケベック州は「北米連邦」への加盟条件として、カナダが採用している公用語の二言語主義を維持するよう求めるだろう。そうなると、連邦政府の業務でも英語とフランス語を併用していく必要がある。大きな統治体制の転換となるが、この点を真剣に考えている人はほとんどいない。トランプがフランス語のレッスンに時間を割くとは、政権の日程の詰まり具合をみても考えにくい。

米国とカナダは、お国柄や発展の歴史的経緯が根本的に異なる。米国のフロンティア精神は独立心旺盛なカウボーイに象徴され、カナダの開拓史は規律正しい王立カナダ騎馬警察隊に象徴される。米国は独立を掲げて革命戦争を起こし、カナダは植民地状態から自治権を得て徐々に発展してきた。これらの違いはそれぞれの国民性にも深く根付いていて、安易に片付けてよいものではない。

トランプ政権は、お粗末な北方拡大構想を追い求める暇があるなら、そのエネルギーを大幅減税の即時実施に振り向けるべきだ。5月末の戦没将兵追悼記念日まで待っている余裕はない。米国の経済成長には減税が必要であり、共和党の対処が遅れれば有権者はその責任を追及するだろう。時計の針は刻々と進み、2026年の中間選挙がどんどん迫ってくる。

カナダに関して言えば、合衆国憲法のバランスを根本的に変えてしまいかねない併合よりも、独立した隣国として友好的な関係を維持するほうが両国にとって有益である。国境が存在するのには相応の理由があるのだ。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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