食&酒

2025.03.21 14:15

最近都内で見かける新疆料理は、急増するウイグル料理とどう違うのか?

「中国西北本場料理」をうたう新疆料理とは?(東京・池袋の「火焔山 新疆味道」にて)

この点についてあるウイグル料理店のオーナーと話したところ、「ウイグル人は中国料理のような調味料はほとんど使わない」という。さらに、こんなことを話すウイグル人もいて、なるほどと思ったものだ。

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あるウイグル人によると「新疆特色美食」として挙げられる料理のうち、赤マルは他民族の料理だという。確かに麻辣テイストの鶏料理「椒麻鶏」は四川料理だし、「納仁(ナレン)」はカザフ人の麺料理だ
あるウイグル人によると「新疆特色美食」として挙げられる料理のうち、赤マルは他民族の料理だという。確かに麻辣テイストの鶏料理「椒麻鶏」は四川料理だし、「納仁(ナレン)」はカザフ人の麺料理だ

「新疆ウイグル自治区には、ウイグル人やカザフ人、モンゴル人、回族など、主に13の民族が住んでいるから、これらの民族の味がミックスして生まれたのが新疆料理だと言えばいいのだと思います」

こう言ってその人は、今日の「新疆美食(グルメ)」とされる料理のうち、もともとのウイグル料理とは違うものがいくつもあることを指摘した。

前回のコラムでも書いたように、ウイグル人経営の店の厨房にはウズベキスタン人がけっこういる一方、新疆料理の厨房には回族がいることが多い。回族はイスラム教徒なので、ハラールの基本を身につけているが、それでも中国化した彼らの味つけは中央アジアのそれとは違ってくるのである。

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こうしたことからわかるのは、日本で食べられる新疆ウイグル自治区出身者が営む店には、ウイグル人経営のウイグル料理とウイグル人以外のオーナーや調理人による新疆料理(また新疆ウイグル料理)の2系統があるということだ。

これは「東京で味わえる『ディアスポラの民たち』のモンゴル料理店探訪記」というコラムで書いた、モンゴル料理がメインランドと中国内蒙古自治区の出身者の店によって料理が異なるという話と同じなのである。

まさにこういうところにガチ中華の面白さがあると言ってもいいのではないだろうか。

新疆の実相が東京で見られる

この話を若いロシア人の友人にしたところ、「なるほど、いまの新疆の実相が東京で見られるわけですね」と言うのである。さすがはロシア人、ユーラシアの広大な領域にまたがる多民族社会の内実をよく理解していると思う。

それをあらためて実感したのは、2023年7月に池袋にオープンした「中国西部本場料理 疆萊(ジアンライ)」(豊島区東池袋1-14-14 B1F)だった。

「中国西部本場料理 疆萊」は、ガチ中華の店が多い池袋西口ではなく東口のアニメイトの近くにある
「中国西部本場料理 疆萊」は、ガチ中華の店が多い池袋西口ではなく東口のアニメイトの近くにある

この店の調理人やスタッフはみな若くて、そのセンスは内装のデザインや貼り出された標語にも現れていた。客層も中国の若者が多い。スタッフに話を聞くと、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人や回族、漢族などの混成チームで店を運営しているそうで、都内にあるどの店にもまだない新しさを感じた。

「我在新疆很想你(私は新疆であなたのことを想っている)」という標語は、いかにも最近の中国の若い世代のセンスらしい
「我在新疆很想你(私は新疆であなたのことを想っている)」という標語は、いかにも最近の中国の若い世代のセンスらしい
豚肉の持ち込みの禁止やお金がない人には無料で食事を提供するといったイスラムの教えに基づく日本語のメッセージが掲げられている
豚肉の持ち込みの禁止やお金がない人には無料で食事を提供するといったイスラムの教えに基づく日本語のメッセージが掲げられている
それほど広くない店内に、艶やかなウイグル文化の意匠をこれでもかと集めた座敷のスペースがある
それほど広くない店内に、艶やかなウイグル文化の意匠をこれでもかと集めた座敷のスペースがある

彼らは来日する前から多民族社会の住人だったのだ。東京の新疆料理を支える人たちの民族的多様性と彼らが協業する姿からは、とかくメディアで扱われがちな新疆の政治的な側面とは異なる実態があることも見えてくる。

なにしろ新中国の建国から70数年も経つのだ。そもそも異国の地で営む飲食業の世界では、民族は違っても同じ「新疆人」、助け合うのは当たり前、共通語が中国語であればこそ、ことさら民族別の境界はなさそうなのである。

そんなことを思いめぐらせながらも、複雑な気分も残らないわけではない。目の前で起きていることは、ある意味すべて、現象の一面にすぎないのだから。これは長く中国を観察してきた人間に共通する認識であるに違いない。

だとしたら、せめて東京に2系統あるらしいウイグルの混ぜ麺「ラグメン」の食べ比べをやってみませんか。そう伝えたくなるのである。

写真=中村正人

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