食&酒

2025.03.21 14:15

最近都内で見かける新疆料理は、急増するウイグル料理とどう違うのか?

「中国西北本場料理」をうたう新疆料理とは?(東京・池袋の「火焔山 新疆味道」にて)

辛さの極みといえば、プルプルの太いライスヌードルにトウガラシの利いたトマトソースで牛肉や鶏肉などを炒めた汁なし混ぜ麺の「新疆米粉(シンジャンミーフェン)」だ。「火焔山 新疆味道」の近所にある同店の池袋東口店(豊島区南池袋1-20-11)はその専門店となる。辛さは3段階に分かれているが、最も辛さを抑えた微辣(ウェイラー)でも舌が痺れて相当辛い。

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「火焔山 新疆味道 池袋東口店」。2019年9月のオープン時はここが本店だった
「火焔山 新疆味道 池袋東口店」。2019年9月のオープン時はここが本店だった
新疆米粉は中年以降のウイグル人には辛すぎるそうだ。最近の中国では、雲南やチベット、新疆などの少数民族の暮らすエリアの地方料理を漢族の口に合わせてアレンジする料理が増えている
新疆米粉は中年以降のウイグル人には辛すぎるそうだ。最近の中国では、雲南やチベット、新疆などの少数民族の暮らすエリアの地方料理を漢族の口に合わせてアレンジする料理が増えている

なぜ新疆料理はこれほど辛い味つけをするのか。次のような理由が考えられる。

1949年の中華人民共和国の建国以降、中国最西部の現在の新疆ウイグル自治区には、主に多くの漢族が移住したため、ウイグル料理が長い時間をかけて中国人好みの味つけに変わっていったのだと思う。

同じようなことは、朝鮮料理と中国の東北料理がミックスした吉林省延辺朝鮮族自治州の料理にも見られることは、以前のコラム「『ガチ中華』の新たなトレンドは少数民族系グルメ、注目は延辺朝鮮料理」でも指摘したとおりだ。

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それにしても、どうしてこれほどまで辛くするのだろうか。それは、今日の中国の料理が全般的に四川料理の影響が強く、パンチの利いたホットな味つけが、とりわけ若い世代に好まれていることにあるだろう。

ウイグル料理もそれなりにスパイシーなのだが、それは中央アジアのスパイスによるもので、新疆料理のトウガラシの刺激ははるかにそれを凌駕している。

この店のメニューを見ていると、「ラグメン」に中国東北地方の特色である発酵白菜の「酸菜」を餡かけしている料理まであった。新疆ウイグル自治区に住む漢族たちは、もともとあったウイグル料理に新たな食材や味つけを盛り込み、自分好みに手を加えていったのだろう。その結果、生まれたのが新疆料理というわけだ。

新疆の料理には2系統がある

中国最西部に位置するこの辺境の地を「新しい土地」を意味する「新疆」と最初に呼んだのは清朝の時代である。つまり、あくまで中国の人たちがこの地域に名付けた呼称なのだが、少なくともガチ中華の世界では、新疆料理は広く認知されているようだ。

興味深いのは、店で働いているスタッフにウイグル人もいるが、オーナーはたいていこの自治区出身の漢族やイスラム教徒の回族、なかにはまったく別の省の出身者もいることだ。「火焔山 新疆味道」のオーナーも新疆ウイグル自治区出身の回族だ。

今日の経済発展した中国では、ウイグル料理のような人気の地方料理は大都市であればどこでも食べられる。新疆ウイグル自治区の中心都市であるウルムチは、今日では高層ビルが林立する中国各地の省都と変わらない現代都市となっており、ここがシルクロードの重要な舞台であったとは思えない様相を呈している。

これまでの観察から、商売上の理由でウイグル人ではなく、またイスラム教徒でもない人たちがオーナーとなるのも珍しくなく、それは海外、そして東京でも同じであることは、若干の違和感を覚えつつも、そういうものなのだと思っていた。

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写真=中村正人

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