最近、都内に増えているウイグル料理店について「都内で続々開店! シルクロードの味が楽しめるウイグル料理店探訪記」と題して、前回のコラムで取り上げたが、これらの店をいくつか訪ねていくうちに気づいたことがある。
シルクロードの住人である新疆ウイグル自治区出身の人たちが営む、それらの店の中に「新疆料理(しんきょうりょうり)」、あるいは「新疆ウイグル料理」と称されているのをよく見かけることだ。
さらにこちらが肝心なのだか、ウイグル料理とこうした新疆料理の店の料理は、見かけは似ていても、味つけに違いがあることだ。それはどういうことかについて、紹介しようと思う。
新疆料理の辛い味つけの理由
たとえば、都内で最初に人気を博した新疆料理店は、2019年にオープンした池袋の「火焔山 新疆味道」(豊島区南池袋1-26-2 近代ビル5F)だろう。
飲食店がいくつも入った雑居ビルのエレベーターの5階の扉が開いた途端、流れ込んでくる耳慣れない中央アジア風の音楽と派手なLED看板のきらめきが訪れた人を迎える。イスラム風のモザイクタイルをポップにあしらったモダンな内装デザインも目に新鮮だ。
最近でこそ日本人も少し増えたが、ハラールレストランであるこの店には、頭をヒジャブで覆ったアジア系のムスリム女性や、中央アジア方面出身と思われるこれまであまり見かけることのなかった濃い顔立ちの人。それらの客層に中国の若い世代やカップルが入り乱れるという、まるで異世界に迷い込んでしまったような楽しさがこの店にはある。
ステージで歌っているのは、新疆出身のウイグル人歌手だ。ウイグル語の歌は中国人の客も歌詞の意味はわからないようだ。


ここまでであれば、前回のコラムで取り上げた上野のウイグル料理店「シープマン」と変わらないように思えるかもしれないが、供される料理の味がかなり違うのだ。

たとえば「牛肉拌黄瓜(ニウロウバンホワングア)」という牛肉とキュウリの和え物はさっぱりした冷菜だが、かなりの麻辣味だ。
鶏肉をトマトやクミン、八角、桂皮などのスパイスとジャガイモやタマネギなどの野菜と一緒に煮込んだ大皿料理の「大盤鶏(ダーバンジー)」は、あとから店員によって小麦の太麺がドサッと入れられ、しっかりと混ぜて食べるが、これも同様だ。
羊肉と野菜の餡かけ混ぜ麺の「ラグメン」や串焼きも、上野のウイグル料理店と見かけはほぼ変わらないのだが、ほとんどがトウガラシや花椒などの中華香辛料をふんだんに使っていて、ホットで刺激的な味わいである。
辛くないのは、羊のスープと、「烤包子(カオパオズ)」と呼ばれる窯焼きミートパイの「サムサ」くらいだろうか。
