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経済・社会

2025.03.24 16:15

「共働き子育てしやすい街」で全国1位 神戸市はなぜ躍進したのか

産後ケア施設の「杉原ケアハウス」

産後ケア施設の「杉原ケアハウス」

2024年の国内の出生数(速報値)は72万988人となり、9年連続で過去最少となった。この出生数の減少のため、近年、国や自治体は子育て支援の拡充に躍起だ。ところが、いまだに正しい答えが見いだせていない厳しい現実がある。

そんななか、日本経済新聞社と日経BPが昨年末に発表した「共働き子育てしやすい街ランキング2024」で、神戸市は全国で総合1位となった。この調査は全国の主要180都市を対象としており、神戸市は2021年に第35位、翌年も第36位だったが、2023年には第4位に躍進していた。

これまで関西圏で、子育て支援で有名な自治体といえば、神戸市の西隣にある「明石市」であった。子供の医療費や中学の給食費などの「5つの無料化」を「所得制限なし」という謳い文句で、当時の泉房穂市長がうまくアピール。2012年から12年連続で人口増を達成していた。

ところが、今回1位になったのは神戸市だった。何が評価されたのかを、神戸市でこども施策の計画や企画を担当し、自身も2歳の娘を育てている、こども家庭局の長尾里津子の話も交えて紹介したい。

今回の調査を担当した長尾里津子
今回の調査を担当した長尾里津子

無料化ではなく、頼りになる支援を組み合わせる

高校卒業までの医療費、第2子以降の保育料、中学校給食などを無料にした明石市とは逆に、神戸市は単純な無料化を選ばなかった。むしろ共働きを念頭に置きながら、困ったときに頼りにできる数々の支援を組み合わせているのだ。

まず、保育所での待機児童ゼロを2021年に達成すると、現在もゼロを継続中。それだけではない。小学校の放課後に子供を預けられる「学童保育」では、希望する1年生から6年生までの児童たち全員が、児童館などを利用して市内に約250カ所ある学童保育を利用できるようにしている。

たちばな児童館での学童保育
たちばな児童館での学童保育

また、夏休み限定の学童保育の受入れは、現在は20カ所だが、この夏には50カ所に拡大させる計画だという。

親世代との別居が当たり前のいま、はじめて子育てに挑む人たちは、育児に関連する情報は動画配信アプリに頼りがちだ。ただ、授乳や沐浴となれば、たとえ助産師などが監修した映像であっても、さすがに自分の子供にぴたりと合うものは見つけにくい。

そこで、母親が子供と一緒に、宿泊あるいは日帰りで過ごすことができるアットホームで居心地のよい実家のような「産後ケア施設」が、神戸市内には35カ所ある。ここでは経験ある専門家から体重測定やスキンケアといった自分が知りたい子育てのコツを学べるのだ。1泊しても6000円、日帰りだと2000円と利用しやすい。

杉原ケアハウスの一室
杉原ケアハウスの一室

0歳児は8割が自宅で親が見ているとされ、産後うつにつながりがちだ。神戸市の産後ケア事業の利用割合は約3割と全国でもトップ水準にある。神戸市こども家庭局の長尾は次のように語る。

「子育ては次々に壁がやってきて、これを越えれば終わるものではありません。神戸市では、そんなニーズに応えられる、コストパフォーマンスが高く、効果に幅がある施策を重視しています」

と長尾は語った。

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文・写真=多名部 重則

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