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2025.03.20 09:30

ベストセラー『シン・日本の経営』の「舞の海」戦略の勝者「宮城県の被災企業」

TDCの赤羽優子社長とウリケ・シェーデ教授

TDCの赤羽優子社長とウリケ・シェーデ教授

「日本をこんなに励ましてくれて、ありがとう」
「すごく元気が出たよ」

講演後に名刺交換に来る人々が、次々とそんな言葉を口にする。

3月7日、都内で行われたNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)主催によるウリケ・シェーデ教授(カリフォルニア大学サンディエゴ校)の講演会でのことだ。

昨年発売されたウリケ教授の著書『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』は、経営共創基盤グループの冨山和彦会長が「21世紀版のジャパン・アズ・ナンバーワンだ」と絶賛し、自著『ホワイトカラー消滅』のなかでも「一読をおすすめする」と推薦。ベストセラーになっている。講演後に多くの日本人が「元気が出た」と握手を求めてきたように、日本企業の武器をエビデンスで示し、その戦い方を提案した一冊になっている。「失われた30年」「ゾンビ企業」「高齢化と労働人口の減少」といった事実をもって「日本ダメダメ論」をいう人は多いが、それだけが全てではないと指摘している。

ウリケ・シェーデ教授の講演は、大企業向けの講演会だったにもかかわらず、ウリケ教授と並んで宮城県の中小企業の社長が招かれ、講演を行った。株式会社ティ・ディー・シー(TDC)の赤羽優子社長(写真左)だ。大企業中心の話と中小企業の話は、意外な組み合わせに見えるかもしれないが、ウリケ教授が「面白い」と言うほど、世界を土俵に日本が十分に勝てることを示す事例である。

まず、ウリケ教授の講演から紹介すると、演題は「舞の海戦略:日本企業のフロンティア素材へのシフト」。1990年代に活躍した小結・舞の海は「技のデパート」と呼ばれ、たえず難しい技を研究・習得しては、身長171センチ、体重100キログラム未満ながら勝ち星を重ねたところが、日本経済のあるデータと重なる。

そのデータとは、「日本企業の国際競争ポジション推移の評価」という、NEDOが作成したものだ。一般的に日本経済は「韓国や台湾に半導体分野やディスプレイ関連で負けた」と悲観的な意見が多いが、そのデータを見ると、実際は韓国や台湾で製造されている半導体やディスプレイなどはほとんど日本企業による先端製品・部材で構成されている。そのため、韓国と台湾の対日貿易赤字は一向に縮まる気配はない。

デジタルカメラのレンズ、画像機器といった日本企業のシェアが100%を占めるものを筆頭に、エレクトロニクス系部材・装置の他にも医療バイオ系、自動車部材などは日本製だ。さらに細かくみていくと、2021年度の集計では、主要先端製品は日本が世界シェア100%の製品は58品目あり、90%超のシェアは94品目、75%以上は162品目という。1024製品を分析すると、シェア50%以上を占める日本製は409製品もある。

これらに共通するのは模倣困難性が高く、他に製造できる国があまりないことだ。スマホをつくるのに日本の企業の部品がないと作れないと言われるように、バリューチェーンの川上に日本企業が集中している。つまり、技術的リーダー国家であり、代わりはあまり見当たらないのである。よって、彼女はこれを「ジャパン・インサイド(ニッポン入ってる)」という言い方をしている。

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文=藤吉雅春

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