仏ゲーム開発大手Ubisoft(ユービーアイソフト)にとってここ数年で最大のタイトルとなる『アサシン クリード シャドウズ』が20日、ついに発売された。『アサシン クリード』シリーズの主要タイトルでは初めて日本の戦国時代を舞台とした作品となる。
本作は、1年ほど前に予告編が公開されて以来、2人いる主人公の1人に実在の人物である「黒人の侍」弥助を採用したことで、激しく非難されてきた。批判的なコメントの中には、弥助は実際には「侍」ではなかったとの理由で歴史的な不正確さを指摘するものがある一方で、単に日本の戦国時代を舞台としたゲームで黒人のキャラクターを主人公にすべきではなかったという主張もある。同じく戦国時代を舞台とした人気ゲーム『Ghost of Tsushima』の主人公・境井仁のように、日本人のキャラクターが好ましいという意見だ(ただし、『シャドウズ』のもう1人の主人公は日本人女性だ)。こうした反発は、米国の現政権も後押ししている「反DEI(多様性・公平性・包摂性)」の社会的トレンドを反映したものでもある。
批判の波は、本作に対する反対運動にも発展している。こうした状況では、開発者個人への直接的な嫌がらせが起きることも考えられる。Ubisoftは、本作の発売後に生じるかもしれないそうした事態に備えているようだ。
仏BFMテレビは匿名のUbisoft社員らの話として、同社が従業員に対し、嫌がらせの被害を避けるための措置として、自分がUbisoftで働いていることなどをSNSに投稿しないよう注意喚起したと報道。さらに、同社の社会経済委員会(CSE=フランスで従業員11人以上の企業に設置が義務づけられている従業員代表機関)も、包括的なハラスメント対策を策定したと報じている。(なお、『シャドウズ』はUbisoftのカナダ・ケベック支社が開発している)
Ubisoftはこの報道を受け、次のようなコメントを出した。「当社は常に、従業員のSNSチャンネルは従業員自身のものであるという立場を取っています。当社の最優先事項は、インターネット上を含めた従業員の安全確保であり、そのためにUbisoft全体の標準的な慣行として、SNSの使用方法、デジタル面での安全対策、および従業員の福祉サポートに関するガイダンスを提供しています。また、当社の従業員が残念ながら直面しているオンラインハラスメントを防止し、それから従業員を守るためのリソースも共有しています」