時計はこの上げ下げの流れに巻き込まれており、投機的な投資家やトレーダーが去った今こそ、筋金入りのコレクターにとっては恩恵を得られる時期でもある。誇大広告によって釣り上げられた高額な品は、多くが再調整された価格で資金力のある層に戻り、時計もそれを逃れることはできない。
時計をバリュー投資の観点で狙う好機が近づいており、どのバブルにも共通するように、崩壊期には貴重な傑作が粗雑に投げ売られる物品と同じ価格で出回る瞬間がある。それが次のサイクルに向けた投資を仕込む絶好のタイミングであり、あるいは高額すぎて手が届かなかった究極のステータスウォッチを入手するチャンスでもある。
底打ちのタイミングは、市場が1年ほど安定してからだと考えている。そのため、時計市場で「落ちてくるナイフ」を今すぐつかむ必要はない。肝心なのはオークション価格を注意深く観察し、値動きが安定しかけるのを待ちながら、高値づかみをしてしまった人々の怒りや苦痛、投げ売りの声に耳を傾けることだ。それこそが「欲張りに転じる合図」だ。暴落した市場が回復するには長い時間がかかるのが常なので、冷静沈着に構える必要がある。焦る必要はない。狙うべき時計を見定め、適切な時期が来たら買えばよい。
自分なりにどの時計が「時の試練」に耐えるかという意見はあるが、ここでは時計収集の有力な目利きであり、YouTubeでも大きな影響力を持つアンドリュー・モーガンの知見を借り、下落局面で注目すべき6つの時計を3つの価格帯に分けて紹介する。具体的にはスターター、ラグジュアリー、オート・オロロジー(超高級時計)の3分類で、それぞれをざっくり以下のように定義している。
・スターター: 1万ドル(約149万円)未満
・ラグジュアリー: 1万〜3万ドル(約149万〜448万円)
・オート・オロロジー: 3万ドル(約448万円)以上
これらの時計がすでに上記の価格帯で買えるとは限らない。ただし、市場がさらに下落すれば、これらのレンジに入る可能性がある。もしそうなったら、底値を見極めるためにウォッチリストに入れておく価値がある。たとえ完璧な底を逃したとしても、あまり気にする必要はない。市場が回復するには長い時間がかかるので、ゆっくりと値上がりしていく過程の利益を十分に享受できるはずだからだ。