具体的に言い換えれば、ロシア軍はクルスク州に最も有能なドローン操縦士たちを集め、彼らは光ファイバードローンなどでウクライナ軍の前線部隊を攻撃するだけでなく、その兵站支援も破壊した。食料や燃料、弾薬を運ぶ車両を攻撃したり、部隊の交替や負傷者の後送を妨害したりすることで、ウクライナ軍の前線部隊を孤立させていった。
これはロシア軍のドローン攻撃の様子を映した多数の動画で裏づけられる。それには、道路脇に着陸して待機し、車両が来ると飛び立って攻撃を仕掛ける「待ち伏せ攻撃ドローン」の動画も含まれる。光ファイバードローンは通信時の消費電力が通常のドローンよりも少ないので、その分、長く待機できる。
Russian drone ambush tactics: A Rubicon Center pilot
— Samuel Bendett (@sambendett) March 12, 2025
in the Sudzha salient flew to the crossroads and "sat" in ambush for the retreating Ukrainian columns. Once one column passed, he lifted the drone from the ground and launched his attack with minimal warning.… pic.twitter.com/0ZdYm8AIE5
最終的に陣地の放棄を余儀なくされたウクライナ軍部隊は、撤退時にも激しいドローン攻撃にさらされた。「敵の敗走時にはその戦闘隊形を著しく狭め、装甲車両や輸送手段をほぼ完全に破壊することができた」とロシアのエンジニアは主張している。
これは、クルスク州に展開していたウクライナ軍部隊の小隊長がニューヨーク・タイムズ紙に語った内容とも一致するようだ。小隊長は、車両はことごとく破壊され、「昼夜を問わずドローンに追い回され、弾薬はほぼ尽きていました」と証言している。
ウクライナ軍もかねて同様の戦術を用いていた。ただ、クルスク州のロシア軍はドローンを圧倒的に集中させたのに加え、ジャミングが効かず、通常のドローンよりも命中率が格段に高い光ファバードローンを使用したのが非常に有効だったとみられる。このあたりの事情は戦車戦の黎明期と重なる面もあるかもしれない。当時、指揮官の間では、戦車を戦線全域に均等に配置するべきか、それとも、最大限の効果を狙って局所に集中させるべきかで意見が分かれていた。
いずれにせよ、ロシア軍の成功ではウクライナ軍の兵站に対するドローン攻撃が重要な要因だったようだ。ウクライナのアナリスト、セルヒー・フレシュ(フラッシュ)も自身のテレグラムチャンネルにこう記している。「敵の成功の理由のひとつは、ちょうどわれわれが(ウクライナ東部ドネツク州の要衝)ポクロウシク方面に最高のドローン部隊を集めたように、敵が最高のドローン部隊をクルスク方面に配し、兵站を妨害する任務を与えたことだ。兵站がなければ軍隊は長く戦えない」