花の色と臭いが、腐りかけの肉のようであることから、「悪臭の死体ユリ」との通称もある。この嫌な悪臭が、ハエなどの虫を引き寄せる(彼らは、死肉の臭いを魅力的に感じる)。雄花に集まった虫に、粘液に包まれてクリーム状になった花粉が付着することで、雌花に花粉が届けられるのだ。
ラフレシアの花は、なぜこれほど大きいのだろうか? 授粉を助けるのが、それほど大きくないハエなのに。

「いい質問だ」とソログッド博士はメールで答えた。「ハエが花粉を媒介する花は、花をつける植物の系統樹のあちこちに存在している。共通点は「死体」(赤茶けた色、毛の多さなど)であり、中でも重要なのがひどい悪臭だ。そうして、花のことを、卵を産む環境だとハエに思い込ませるわけだ」
「ラフレシアの花も例外ではない。死体の『ふりをする』ことでハエをおびき寄せる。腐りかけの肉のような悪臭でハエを誘惑し、花粉を運ばせて、報酬は与えない」とソログッド博士はメールで説明した。「いわば、ラフレシアはひどい匂いのする詐欺師なのだ。特に、メスのハエが標的になり、彼らの母性本能が利用される。死体が大きいほど、子孫を残すのによい環境に見えるからだ。似たような『嘘』は植物界のあちこちで見られるが、大きさに関してはラフレシアが一番だ」
謎に満ちたラフレシア属だが、現地の人々の間では長らく薬用に使われており、最近では、エコツーリズムで収益源にもなっている。ただ、人気や科学的関心が高まっているにもかかわらず、ラフレシアのことはよくわかっていない。栽培が困難(あるいは不可能)であり、種を長期間保存することができないからだ。
生物多様性の保全を目指す国際自然保護連合(IUCN)が現時点で「近絶滅種」として正式にリストに入れているのは、残念なことに、ラフレシア属の種の一つである「Rafflesia magnifica」のみだ(注:Rafflesia magnificaは異名であり、正式な種名ではない)。
これに対して、ソログッド博士と同氏に協力する国際チームは、2023年9月に公開したラフレシア属の保護状況に関するレビュー論文(ラフレシアが直面する脅威を初めて正式に評価したもの)において、判明しているラフレシアの42種のすべてを、絶滅のおそれがあるとしてIUCNの「レッドリスト」に加えるべきだと主張している。