2021年にフォーブスの『フィンテック50』に初登場したAspirationは当時、評価額10億ドル(約1490億円)で2億5500万ドル(約379億円)の資金調達を完了していた。その当時、500万人のユーザー数を誇った同社は、化石燃料を使用しない企業への投資などの「環境に配慮した金融サービスを提供する企業」として注目を集め、SPACとの合併による上場を計画していた。
しかし、翌年10月には会社の成長が鈍化する中で、創業者同士の間に亀裂が生じ、サンバーグとAspirationの取締役会は突然、チェルニーを解任した。その後、同社は突如として炭素クレジット販売に注力するという不可解で劇的な事業モデルの転換を遂げていた。
「架空売上」と偽の財務諸表
ブルームバーグは昨年7月、Aspirationが架空の売上を計上した疑惑について報じていた。その記事よると、同社が報告した収益の一部は、実際には投資家からの意向表明書(LOI)のみに基づくもので、実際には資金が移動されていなかったという。その記事はまた、事情に詳しい関係者の話として、司法省と商品先物取引委員会(CFTC)がAspirationの炭素クレジット事業に関連した捜査を開始したと報じた。
さらに、裁判資料によるとサンバーグは、Aspirationの株式を担保にして、投資家から融資を受けたが、その際に彼は、偽造書類を用いて資産があるように見せかけたとされる。検察の告発書類によれば、サンバーグはアルフセイニと共謀して偽の財務諸表を作成し、証券会社に架空のブローカー口座を作成し、複数回に渡り詐欺を行っていた。
例えば、2020年初めにアルフセイニは口座の残高を8600万ドル(約128億円)と偽装していたが、実際の残高はわずか約4400ドル(約65万円)に過ぎなかった。また、偽の銀行口座の明細には、2500万ドル(約37億1500万円)の現金を保有していると記載されていたが、実際の残高はわずか約4万3000ドル(約640万円)だった。さらに、2021年11月には、より大きなローンの担保として、1億9900万ドル(約296億円)相当の証券を保有していると記載された偽の証券口座の書類を提出したが、実際の残高は約2700ドル(約40万円)程度だった。
アルフセイニは、2020年4月から2023年2月にかけて、少なくとも24回にわたり偽の書類を提出していたと有罪答弁で認めた。一方、サンバーグは、貸し手に疑われないようにするためのアドバイスを与えていたと、連邦地裁は訴状で述べている。その結果、貸し手は彼らに貸した資金をすべて失うことになったと告発文は述べている。
サンバーグに対する告発と、アルフセイニの有罪答弁に関連する罪状の最高刑は、理論上20年の禁固刑となるが、連邦詐欺事件の量刑は、被告の前科や被害額、責任の認識度合い、司法取引の有無などの要因によって決定されることになる。


