3. 「好きにしたら。私には関係ない」
パートナーと激しい口論をしている場面を想像してみてほしい。 苛立ちと疲れで「好きにしたら。 私には関係ない」と投げやりな態度を取る。その瞬間、あなたはただ苛立ちをぶちまけているだけかもしれないが、相手はもっと深い意味を感じ取る。つまりあなたがパートナーの感情や決断、あるいは関係そのものを気にかけていないと感じるのだ。
この言葉は単に相手を否定するだけでなく、意図的に心を閉ざしていることを示唆する。基本的には相手に「あなたの選択はもはや私にとって重要ではない」と伝えていることになり、長きにわたってふたりの関係性は不安的になり、感情の断絶を生み出す。
専門誌『フロンティアーズ・イン・サイコロジー』に2022年に掲載された研究では、心を閉ざすことはふたりの対立を解決する方法として相応しくないとし、それが親密な関係を避け、ひとりでいるほうが楽だと感じる「回避型愛着スタイル」と強く関連していることを指摘している。
研究者らは対立時の相手との距離の置き方を、2つのタイプに分けている。
・自分の殻に閉じこもる:意図的に心を閉ざしたり、意思疎通を拒んだりする
・建設的な対応できない:感情的に行き詰まった、あるいは麻痺したような状態で、建設的な対応ができない
特に、自分の殻に閉じこもることは関係への満足度低下と強く関連しており、対立を繰り返し生み出す傾向があることが分かった。「好きにしたら。私には関係ない」という言葉は自分の殻に閉じこもっているときに発せられる。意図的に心の距離を置いていることをパートナーに伝え、相手の不満を誘発し、感情の断絶をさらに深刻なものにする可能性がある。
代わりに、次のような答え方がある。
・「今は参っている。少し時間を置いてからこの件について話そう」
・「頭を整理する時間が少し必要」
これらの言葉は、パートナーを否定することなく自分の気持ちを明確に表し、解決と理解につながる。
4. 「あなたはいつも...」「あなたは一度だって...」
例えばあなたにとって大事なことをパートナーが忘れてしまい、あなたは気分を害しているとしよう。 苛立ちを覚えたあなたは、すぐに「あなたはいつもこうする」とか「あなたは私の言うことを聞かない」と言う。 感情の昂りもあり、これらの表現を使うことは正しいことのように思えるかもしれないが、パートナーは公正さを欠く決めつけだと感じる。
特定の状況について言及するのではなく、相手の性格全体を決めつけてなじるため、相手は攻撃されていると感じて身構える。
このような決めつけの言葉が発せられると、相手の焦点は目の前の問題解決から、広範囲にわたる非難から身を守ることへと移るため、何もいいことはない。対話を始めるのではなく、終わらせることになる。そして怒りに満ちた、決して解決することのない対立が繰り返される状況を作り出す。
専門誌『ソーシャル・デベロップメント』に掲載された研究では、「建設的な対立」と「高圧的な対立」を区別している。「建設的な対立」は、双方が歩み寄って対話と前向きなやり取りを伴い、コミュニケーションスキルや関係の満足度、感情面での親密さの向上につながる。
これに対し「高圧的な対立」では、非難や否定的な感情、そして憤りや心を閉ざすこと、関係への不満といった、好ましくない結果を伴う敵対的または攻撃的なやりとりが繰り広げられる。
「あなたはいつも...」や「あなたは一度だって...」といった言葉は、相手に非難や敵意を伝えるため、生産的な対話ではなく防衛的な反応を引き起こすことになり、「高圧的な対立」を悪化させる。