最初は時給制の契約社員からスタートし、日給月給制(契約社員)からフル賞与・退職金のある正社員へのキャリアアップの道があり、すでに1人が正社員となった。能力と希望がマッチすれば親会社への転籍も可能だ。農場を開設して5年超が経過し、社員も定着してきた今、会社の目標は黒字化だ。
「野菜も売り上げが伸び、全体の赤字は年々縮小し、従業員の人件費も一部まかなえるようになってきた。多くの特例子会社は赤字なので、黒字を目指すこと自体がレアなことのようです。黒字化って何のためにやるのかと、よく聞かれます。最初から赤字事業、赤字製品でいいと定めてしまっては、その仕事に誇りは感じられませんよね、と答えています」
営業部長として胡蝶蘭の販売に注力している沢野光秀も「黒字化のことは常々、メンバーに言っている。自分で働いて給料をもらって税金を払うことで社会とつながっているのだと、みんなが意識していると思います」と話す。鈴木は「ポレポレはアフリカのスワヒリ語で、『ゆっくりのんびり』という意味です。障がい者雇用にしっくりくる名前として選びましたが、では今ゆっくりやっているかっていうと、そうではないですね」と笑う。「ハンディキャップのある社員が会社や事業に貢献するだけでなく、自らが経済社会を構成する労働者の一員であることに、やりがいと誇りを感じられることが大事だと思っています」。
「貸農園」モデルの広がりと実態
障がい者雇用率を達成して社会貢献したい企業ニーズを受け、障がい者が働く場を提供するビジネスも拡大している。
埼玉県の川越駅から車で約15分、広い敷地に26の大きなハウスが立ち並ぶ。障がい者雇用支援の「エスプールプラス」(東京)が2年前に開設した「わーくはぴねす農園 さいたま川越第2」。ハウスごとに3人の障がい者とサポート役の農場長の4人で野菜を栽培する。ITや製薬、土木など16社が、賃料を払ってハウスを1つから複数借り、障がい者を雇用する。計約80人の障がい者が働いている。
エスプールプラスは農園を企業に貸し出し、働き手の紹介も行う。10年から首都圏や愛知、大阪などで、屋内型を含めて約50の貸農園を運営する。現在約660社が利用し、約4400人が働く。「知的障がい者の就職が進んでいないことを知って、その人たちの働く場を提供したいという想いで、事業をスタートしました」。そう話すのは設立当初から昨年末まで社長を務めた和田一紀。和田は25年1月から親会社のエスプールの常務執行役員に就任した。
「もともとエスプールは雇用機会に恵まれない人の雇用をつくろうと、若者やフリーター、主婦らの就労支援を行ってきました。障がい者では身体に障がいのある人のほうが就職率が高い。企業が知的・精神障がいの人を採用していこうと考えても、ポジションはあまりないし、接する方の知識も必要です」
高砂熱学グループの「TMES」(ティーメス、東京)が借りている2つのハウスで働く土屋成二(46)は知的障がいがある。3年前に同社に採用されるまで福祉作業所で16年間、宛名貼りや箱折りなどをしていた。「作業所の給料(工賃)は多くて月2万円くらいでした。給料が安いので、いい仕事に就きたいと思っていたところ、作業所でここを紹介されました。本社の人たちに野菜を送って喜んでもらったときがうれしいし、友達も増えた。月給は十数万円で、生活費の残りを貯金しています」
冬に育てていたのはチンゲンサイやブロッコリー、キャベツなど。年間約50種までつくれる。週5日、1時間の休憩を挟んで1日6時間働く。26歳の男性は就労支援施設の紹介でエスプールプラスの就職体験会に参加し、働こうと決めた。「農業の知識が得られるのがいいと思った。苦手なコミュニケーションも改善されていると感じ、できる限り続けたいです」。


