Tomorrow.ioが生み出したソリューションは、単なる天気予報にとどまらず、企業が具体的に取るべき対策を提案するソフトウェアだった。このソフトウェアは、航空会社に大規模な嵐の際に飛行機を地上待機させるか、ルート変更すべきかの提案を行う。また、製薬会社には、温度管理が重要な原材料や医薬品の輸送に関する気象アラートを提供する。さらに、MLBの野球チームには、風がボールの飛距離に与える影響や湿度が球速に及ぼす影響などの、天候が選手のパフォーマンスに与える影響についてのデータを提供している。
Tomorrow.ioのアルゴリズムは当初、NOAAのものと類似していたが、最近では、同社は生成AIモデルを活用し、NWSの公開データと自社の衛星データの両方を分析して顧客向けのインサイトを導いている。「気象学者の意見を聞くのではなく、ソフトウェアを活用することで意思決定を大規模に自動化できる」とエルカベッツは語る。
Tomorrow.ioは、手作業で行われていた意思決定を自動化するだけでなく、気象データへのアクセスの向上にも取り組んできた。世界のほとんどの地域では、NWSが米国で提供しているような包括的なデータが不足しており、それが正確な予報を作成する上での大きな障害となっている。
「地球上の90%の地域には、リアルタイムで高品質なデータが存在しない」とエルカベッツは指摘する。特に、海洋環境を監視するセンサーがほとんどないため、津波やハリケーンの予測が難しくなっており、海運業者が避けるべき一般的な嵐すら正確に予測できない国もある。
累計400億円調達で衛星を打ち上げ
Tomorrow.ioは、初期の段階では大規模な投資を必要としない方法で気象データの収集を改善しようと試みていた。「なぜなら、資金がなかったからだ」とエルカベッツは語る。その一例として、携帯電話の基地局からの電波信号の変化を分析し、湿度などの要因によって変化する気象関連データを推測する手法があった。
しかし、それは特に有効な手段ではなかった。一方で、NOAAが使用するような地上レーダーシステムの構築には数十億ドルのコストがかかる。バルーンを活用した比較的安価なシステムもあるが、それらは局所的なデータしか収集できず、仮に数百個のバルーンを運用できたとしても、グローバルに展開することは不可能だ。
その結果、同社は宇宙に目を向けるようになった。2023年5月、Tomorrow.ioは商業ベースで開発された初の気象レーダー衛星を打ち上げ、NOAAの地上レーダーシステムに匹敵する測定を実現した。その後、同年後半には2機目の衛星を打ち上げ、2024年には温度や湿度などの大気データを測定するマイクロ波サウンダ衛星を2機追加した。