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経営・戦略

2025.03.17 10:45

マネーフォワード・辻庸介が語る M&Aで「いい会社」を招く方法

辻庸介/マネーフォワード社長

Getty Images
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一緒にご飯を食べなきゃ人間性はわからない

では、逆にうまくいかなかったことがあるのか聞いてみると、「当然ありますよ。ただ、無理な会社は最初からどこかひっかかるんです。業績も良く、数字だけで見ればグループジョインした方がいいのですが、やっぱり交渉がうまくいかない。なかには合意まであと一歩のタイミングで、ストップしたものもあります。僕個人としては、カルチャーも違うし、大丈夫かなと思っていたのですが、現場からの要望があったので進めていましたが、デューデリジェンスの最終段階で現場から『辻さん、やっぱり無理かも…』って(笑)。話が進んでいるタイミングでしたが、丁重にご説明しました」。だからこそM&Aでは、「トップ同士の信頼関係が重要」だと辻は言う。

この人は騙さない、信頼できるという確信があるからこそ上手くいく。それは、現場での交渉になると、必ず折り合いのつかない問題が生まれ、それを解決するには経営者同士でなければできない。そのために辻は、「やっぱりミーティングだけだとダメで、一緒にご飯食べなきゃ人間性はわからない」と言っている。

一方で、いい会社を買ったとしても社内の意思統一がなされていなければ上手くはいかない。「例えば、最初の案件であるクラビスのサービスが、僕らのサービスより優れていたと言いましたが、その差は追いつけないわけではないですし、よく社内の議論であるのですが、『これ我々でも作れます』という声が必ず挙がります。でも、作らないケースが多い。それはメンバーが忙しいし、他にもやることが多いから。だからといって、『社長が買ってきたからよろしくね』じゃダメで、現場が腹落ちして、クラビスのプロダクトがいいから売りたいと思わないと上手くいかないんです。だから、M&Aには事業サイドも関わってもらって、彼らがノーといえば進めないようにしています」。

実際、辻は失敗もしている。「M&Aは当然、関わる人が少ないほうが情報を漏らさずに済みます。ところが、うっかり社内の言っておくべき人物に伝えるのを忘れていて、M&Aのリリースを出してホッとしていたら、スマホに『聞いてないです。やめます』というメールが届いたんです。すぐに謝罪して説明しにいきました。何とか理解してもらったので言えるのですが、いい教訓になりましたね」こうしたことを防ぐために、辻は日頃の情報発信を大事にしはじめた。「僕らのビジネスの課題ややりたい事業などを常に言っておくと、何かニュースが出た時も、これまでの文脈で理解してもらえるようになるんです」。この発信とコミュニケーションはM&Aに限らず経営者の永遠の課題であろう。

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文 = 古賀寛明

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