
「ひとつが、マネーフォワードと組むことで、一社でやるよりも5倍、10倍に成長できると思えるロジックを説明したことです。2つ目が、事業家はみんな、基本的に事業を伸ばしたいと考えています。そして、自分たちでやりたいとも思っている。決して、事業を高く売れればいいと思っているだけではありません。だから、グループに入ってからの役割については詳細に話をしました。それはどんな形であれ、企業が買われるというのは寂しいものですからね。何より、僕らの場合は冒頭で述べたように経営はお任せしています。そして最後の3つ目が、経営者が僕らと一緒にやることで、『もっと面白いことができる』と思ってもらえるようにすること。近い領域でやっている分、世の中を変えたいなど、事業の志、理想が共通している場合が多くあります。だから、僕らのビジョンを伝えていけば、もっとワクワクしてもらえると思ったのです」。
マネーフォワードは、M&Aのことをグループジョインと呼ぶように、社名も経営陣も基本的にはこれまで通りで、グループとしての強みを発揮しようとしている。現在まで9社がグループに加わったが、M&Aのやり方は様々で、情報元もバラバラだが、経営のスピード感と代表者である辻とジョインした経営者の考え方や志が近いところに共通点がある。
例えば、2018年にグループ化したナレッジラボは、「テクノロジーで中小企業をもっとよくしたい」という共通した思いを掲げていたことが決め手のひとつとなり、スマートキャンプ社長の古橋智史(当時)は「楽しそうに業績を伸ばすマネーフォワードの経営を見てみたい」とジョインした。この先のM&Aについても既に候補先をリストアップしたロングリストを作成しており、なかにはマネーフォワードよりも規模の大きな企業が入っているという。辻も「できたらいいなと思っていて、そのためのアクションとしては、“僕たちが成長する”と書かれています」と、楽しそうに未来を語る。