セッションは実務的・実用的な話が中心
・AIソリューションによる従来のビジネスの近代化
・ROI(投資利益率)に基づくアプローチ
・産業変革の契機としてのAI
・AI時代のコラボレーションと労働力の変革
・倫理的なAIと責任あるイノベーション
・レガシーシステムの更新による高度なAIの管理

HumanXのセッションは、大きく上記の6カテゴリーに分けられる。ガバナンスやROIなど、管理者やユーザー目線の、実務的・実用的な話が中心で、海外カンファレンスにありがちな眉唾物の未来予測はなかった。私たちのビジネスや生活において、具体的にどうやってAIを活用すべきかという視点である。地に足のついた、冷静な議論が展開されていた点で、他のAIカンファレンスとは一線を画しているといえよう。
AIエージェントがもたらす「大きな変化」
HumanXウェブサイトの登壇者ページにおいて、最も目立つ場所で紹介されていたのが、オープンAIの最高製品責任者(CPO)、ケビン・ウェイル氏である。インスタグラムの製品担当副社長、ツイッターの製品担当上級副社長を歴任した実力者だ。ウェイル氏は今回、「AIが人間の体験をどのように変えるか」と題したセッションに登壇。AIが世の中にもたらす変化について語った。
ウェイル氏は、「AIエージェント」の活用が本格化する2025年に「大きな変化が起こる」と指摘。その理由として、単に質問に答えるだけの存在であるChatGPT(チャットGPT)とは異なり、AIエージェントが実際の業務を自動処理してくれる点を挙げる。
一方でウェイル氏は、AIエージェントによって人間がすべての仕事から解放され、詩を書いたりベーシックインカムで暮らしたりするようになるとは思わないと強調する。「人間は本質的に、自分より大きな課題を解決し、よりよいものを生み出したいという欲求を持っている」とした上で、人間はAIの力を借りながら、これからも新しい価値を創造し続けるとの見通しを述べた。
AIが私たちや子どもたちの基礎的なスキルを奪ってしまうとの主張はよく聞かれる。この点についてウェイル氏は「(スキルを奪うかどうかは)分からない」としつつも、こうした技術は「レバレッジ(=効率を上げる手段)」であると説明。電卓やインターネットを引き合いに「(同じような変化は)世代ごとに常に起きている」と指摘した。
AIを活用した学習の理想像について、ウェイル氏はすべての子どもが「1対1の個別指導」を受けられる環境を挙げる。ある研究によると、教室での学習に個別指導を組み合わせることで、学力の大幅な向上が確認されたという。これを根拠に「(AIが浸透することで)これからの世界はより良い方向に進む」という考えを示した。