「的を得る」の意味とは?
「的を得る(まとをえる)」とは、「物事の本質や重要なポイントを正確に捉える」という意味を持つ表現です。直感や論理によって状況の核心を突いているとき、まさに「的を得る」判断ができているというわけです。ただし、一部では「的は得るものではなく、射るものだ」という主張もあり、言葉の正しさを巡って議論があるのも事実です。
実際に辞書などを確認すると、「的を得る」という表現を誤りとして扱わない見解もあれば、本来は「的を射る」のみが正しいとする意見も存在します。とはいえ、現代では「的を得る」は相当数の人に使われており、ある程度市民権を得ている表現といえるでしょう。
「的を射る」の意味とは?
「的を射る(まとをいる)」は、「矢などを用いて実際に的に命中させる」という意味が元来の語源で、「的確に要点をつく」という比喩表現としても用いられます。つまり「重要なポイントにぴたりと命中させる」というイメージがあるのが「的を射る」なのです。
古くから弓道や武術の言い回しとして存在し、それが比喩的に拡張され、「正しく要点を突く」というニュアンスで幅広く使われるようになりました。「的を射る」のほうがより正統派の表現だと言われることも多く、ビジネス文書や公的な場面では、はっきりこちらを選ぶ人も少なくありません。
「的を得る」と「的を射る」正しいのは?
文法的・伝統的観点からすると、「的を射る」が古くからある正しい表現です。一方で、「的を得る」も現代では「核心を突いた発言をする」「要点を的確に捉える」といった意味で広く使われており、多くの辞書では誤用扱いされない場合が増えています。
したがって、どちらも日本語としては一定の支持を得ていますが、「本来の表現を使いたい」「言語の由来を大切にしたい」という場合、より無難なのは「的を射る」です。ビジネス文書や公式の場面では「的を射る」のほうが伝統的・正統的とみなされることが少なくありません。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネス文書や会話においては、「的を得る/的を射る」は、問題の核心や本質を突いている状況を称賛したり、「まさに要点を押さえた意見だ」と評価したりするときに使われます。例えば会議中に、誰かが的確な指摘をした場合、「その意見は実に的を射ていますね」などと使う形が一般的です。
コミュニケーションにおいてポイントとなるのは、相手や文脈に合わせて使う表現を選ぶこと。相手が言葉の由来や文法にこだわるタイプなら「的を射る」を用いるほうが、より好印象を与えやすいでしょう。逆に、相手や社内文化で「的を得る」が定着している場合は、それに合わせても問題はなさそうです。
言葉の由来と使い分け
「的を射る」は、元来は弓や矢を用いて的へ命中させる行為から派生している言葉です。一方、「的を得る」には、本来「得るものではなく射るもの」との批判がありますが、当てはまる場面で誤用とまではいえないという見解が現代では主流になりつつあります。ただ、「的を得る」と「当を得る(とうをえる)」を混同して使う例もあるため、注意が必要です。
実際、「当を得る」は「的確である」「筋が通っている」という意味を持つ表現ですので、「当を得た発言」などは別の言い回しとして正しい一方、「的を得た発言」をそのまま誤用と見る人もまだいるのです。ビジネスにおいては最も無難なのは「的を射る」「当を得る」を意識的に使い分ける方法といえるでしょう。
類義語・言い換え表現
「的を射る」「的を得る」と同じように、「意図や目的にぴたりと合致している」「正しく要点を突いている」ことを表す言い回しは他にも存在します。状況に合わせて言い換えることで、文章や会話にバリエーションが生まれます。
「核心を突く」
議論や交渉などで誰かの意見が「物事の本質を正確に表している」と判断された場合、「核心を突いている」と形容します。特にビジネス文書や会話でやや硬いニュアンスを保ちつつ、論理的に相手を評価する際に用いられます。
「要点を押さえる」
よりカジュアルかつ汎用的な表現として「要点を押さえる」が挙げられます。プレゼンやレポートを見て、「要点をよく押さえている」と言えば、短い言葉で「肝心なところを外していない」という評価を伝えられます。
「的確な」
「的を射る」「的を得る」の主旨が「正確でぴたりと合っている」という点にあるため、「的確な」と言い換えることで簡潔に褒めることができます。文書や資料内でも「非常に的確な意見」と書けば、誤解なく伝わるでしょう。
例文:ビジネスシーンでの活用
以下に、「的を射る」を優先しつつ、ビジネスで実際に使える形の例文を挙げてみます。「的を得る」をどうしても使いたい場面でも、同様の流れを参考にしてアレンジすると良いでしょう。
プレゼン・会議での発言
- 「そのご提案は問題の本質を的を射ていると感じます。早速、具体的なアクションを検討しましょう。」
他人のアイデアを評価する際に「的を射る」を用いると、正式かつ的確に褒める表現になり、相手にも好印象を与えます。
レポートや資料のフィードバック
- 「先ほどのレポートでは要点が整理されており、課題の指摘も的を射ていました。実行に移すための詳細案があるとなお良いと思います。」
文書全体が論理的にまとめられていると感じたときに、このフレーズを用いれば、適切な評価を伝えることができます。
まとめ
「的を得る」と「的を射る」は、どちらも「物事のポイントを正確に捉える」ことを指す表現であり、現代では「的を射る」がより伝統的・正確な表現として推奨される傾向があります。しかし「的を得る」も多数の人々に使われており、完全に誤用とは見なされないケースも増えています。
ビジネスシーンでは、「的を射る」をメインに活用するのが無難ですが、いずれの場合でも、背景や文脈に応じて使い分けることが大切です。また、類義語として「核心を突く」「要点を押さえる」「的確な」などがあるため、これらの表現と併せて活用すると、より自然かつ正確に相手の意見や成果を評価できるでしょう。
かしこまった場面や文書では「的を射る」を優先し、カジュアルな場面ではニュアンスに合った言い回しを選ぶと、円滑なコミュニケーションに役立ちます。