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サイエンス

2025.03.14 08:15

赤い「青りんご」誕生なるか 最新研究での可能性

gettyimages/ Malisa Nicolau

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 青りんごは赤くならない――これまでの常識を覆す発見がなされた。千葉大学大学院園芸学研究院の齋藤隆徳准教授、静岡県立農林環境専門職大学の森口卓哉教授(2024年3月定年退職)、弘前大学農学生命科学部の林田大志助教らの共同研究グループは、「青りんご」とされる品種でも特定の条件下で赤くなること、さらにそのメカニズムが品種ごとに異なることを明らかにした。つまり遺伝子組み換えや薬剤などを使わずに色を変えることが可能であると判明したのだ。この研究成果は2025年2月、国際学術誌『Scientia Horticulturae』に掲載された。

「青りんごは赤くならない」がこれまでの常識

青りんごと赤りんごについて、恥ずかしながら筆者はよく理解しておらず、品種が異なるのか単に熟したら赤くなるのか、そもそもの違いさえわかっていなかった。調べると青りんごと赤りんごは、基本的に品種の違いによるものとのことだった。
 
りんごの果皮の色は、主にアントシアニンという色素の蓄積によって決まる。また、その色素を生成するかどうかは遺伝的に決定される。特に「MdMYB1-1」と呼ばれる遺伝子がアントシアニンの合成を活性化させ、赤いりんごを生み出すことが知られている。一方で、「MdMYB1-2」や「MdMYB1-3」といった対立遺伝子(※)しか持たない場合は青りんごとなる。つまり、青りんごと赤りんごの違いは、熟すかどうかではなく、遺伝的にアントシアニンを作るかどうかによるものだと言える。
 
(※対立遺伝子:遺伝子の多くは父親と母親に由来する一対の組み合わせとなっている。この対となる遺伝子セットのそれぞれを対立遺伝子と呼ぶ)

 


 
しかし、従来は青りんごとされてきた品種の中にも、特定の条件下で赤みを帯びるものが存在する。例えば、「陸奥」や「弘大みさき」などは、幼果期に果実袋をかぶせて暗闇で育て、収穫直前に太陽光を当てることで赤く変化することが知られていた。ただ、そのメカニズムは長らく不明のままだった。
 

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文=福島はるみ

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