軌道の方向に基づくと、調査対象の超高速星の半数は、いて座A*を起源とすることはあり得ないと、研究チームは気づいた。超高速星の軌道は、LMCの方向を真っすぐに指し示していたという。
そのため、この星の密集集団は、LMCによる超高速星の生成に起因しているに違いないと、ハンと研究チームは結論づけた。これは、LMC内に超大質量ブラックホールが存在するに違いないことを意味する。
だが、LMCの超大質量ブラックホールの検出に、なぜこれほど時間がかかったのだろうか。
ハンによると、LMCは空で非常に大きく広がっており、さらには銀河の歪みが進行中であることから、その「中心」が明確に定まっていない。そのため、ブラックホールと直接的に関連する可能性のある、明らかな光子源がまだ見つかっていないという。だが、今回の研究では、超大質量ブラックホールによる超高速星の生成によってその存在の強力な証拠を見つけることができたと、ハンは指摘している。
まとめ
ハンによると、宇宙の他の場所にある矮小銀河にも今回のような巨大なブラックホールが存在する可能性があるかどうかについては、いまだに議論が続いている。これも銀河系の伴銀河の1つで、約20万光年の距離にある小マゼラン雲(SMC)にこれほど巨大なブラックホールがあることを示す証拠は今のところ存在しないという。
だが、銀河系のような大型の渦巻銀河には超大質量ブラックホールがあることは、以前から知られている。太陽の約400万倍の質量を持つ銀河系中心のいて座A*と比べると、新発見のLMC*は小さく見えてしまう。
次なる展開は?
ブラックホールに対応する可視光や電波、X線の発生源を見つけて、LMC*の位置を特定することだと、ハンは指摘する。LMC*が正確にどこにあるかと、LMC*を直接取り巻く領域がどうなっているかを知りたいと、ハンは話している。