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アート

2025.03.15 10:15

「わたし」を決めるのは誰か? スクリプカリウ落合安奈の返事

美術家・スクリプカリウ落合安奈と新作 《光を紡ぐひと》(2025)

写真というメディアを避けたのは、母とは違う道に進みたかったからだ。しかし、二つの祖国を移動することを優先するために、移動しながら表現できる写真が重要な手段に変化していった。デジタルでの再現の探究を経て、フィルムへ。《ひ か り の う つ わ》(2023)以降の作品からは、その場の空気まで閉じ込めたような物質感が伝わってくる。

二つの祖国の光を並べた《Light Falls Home(s) - 家のひかり》(2021)
二つの祖国の光を並べた《Light Falls Home(s) - 家のひかり》(2021)

これまで自身のルーツを作品に投影してきた落合だが、世界で発表する機会が増えるにつれ、ミックスルーツの価値観の違いを感じるようになった。島国である日本ではめずらしがられる“ハーフ”でも、大陸ではさほど特異なことではない。また、写真の世界において、自己のルーツを辿り撮影する手法は、すでに確立された表現のひとつでもある。

「ヨーロッパでのミックスルーツと、ヨーロッパと日本を跨ぐミックスルーツでは、社会で起きる摩擦の様相も異なる。このテーマの学術的な研究は少なく、問題が可視化されていない部分も多い。今後もミックスルーツや人間の帰属意識に関する研究と表現を続けるとともに、それ以外のテーマ作品にも積極的に挑戦していきたい」

今後の活動について問うと、「写真作品で真正面から勝負したい」と語る。今秋から東京都写真美術館で開催される「日本の新進作家 vol.22」も、その挑戦の一つである。これまでは目にした情報を余すことなく捉えるため、カラー写真を中心に制作してきたが、今後は抽象的な表現をモノクロで追求したいという。

「20代は身体のことを後回しにして、生き急ぐように作品を作ってきた。作家は健康で幸せになったら作品がつくれなくなってしまうのではないかと、固定概念に囚われていたこともあった。しかし最近は、このままではいずれ限界が来るだろうと感じている。これまで支えてくれた方々への感謝の気持ちとともに、これからも作家活動を続けていきたい。そのためには、まずわたし自身がわたしの人生を大切にすることが不可欠だと考えています」

『わたしたちの返事:1975-2025』

会 場 : アニエスベー ギャラリー ブティック(東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F)
会 期 : 2025年2月22日(土)〜3月23日(日)
休廊日 : 月曜日
時 間 : 12:00〜19:00

文=Forbes JAPAN 編集部 写真=山田大輔

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