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食&酒

2025.03.16 14:15

創業400年のアンリ・ジロー社に学ぶグローバル戦略と富裕層戦略

1625年にその歴史をスタートさせたシャンパーニュメゾン、アンリ・ジローが今年で創業400周年を迎えた。「ヨーロッパ社交界の限られた顧客にのみ販売され、一般市場になかなか出回らなかった」というストーリーと共に希少性が謳われていた同メゾンだが、数十年前は著名シャンパーニュメゾンの当主でさえ、その存在を知らないこともあったという。

近年クローズドのイメージは払拭され、フランス国内はもとより日本や韓国をはじめとするアジア、イタリア、中国、アメリカなど様々な市場で販売されるようになった。生産本数は年間25万本と小規模ではあるものの、グローバル市場で頻繁に目にするようになり、今日に至る約30年のブランディングで確固たる存在感を示している。

ピノ・ノワールの聖地として知られるグランクリュ アイ村で生まれた良質なブドウと、アイ村から80kmほど離れたアルゴンヌの森で育った極上の樫から生まれた樽。この2つのテロワールに徹底的にこだわり、創業からアンリ・ジローならではの唯一無二のキュヴェを創り出してきた。特に近年は、リザーブワインを毎年継ぎ足していく「パーペチュアルリザーブ」を積極的に打ち出し、現シェフ・ド・カーヴ(醸造責任者)であるセバスチャン・ル・ゴルヴェ氏の独創的な哲学を表現している。

アンリ・ジロー社にとって日本市場は極めて重要であり、販売本数は本拠地フランスに次ぐ第二位、輸出先としてはトップの座を誇る。フランスは「エスプリ・ナチュールG」などのスタンダードラインが中心に購入されている一方、日本では「フュ・ド・シェーヌ」や「アルゴンヌ」などのプレステージラインが人気というのも興味深い。

景気の低迷が長引いている日本においても富裕層の底力は健在で、この二極化が進んでいる昨今にどれだけ「超」富裕層に刺さる高価格商品や、そこに付随するエクスクルーシヴな体験を打ち出せるかがキーポイントとなっている。この背景を踏まえ、創業400年企業のグローバル戦略と富裕層戦略について幾つかの事例を考察したい。

満を持してリリースした垂涎のシャンパーニュ

アンリ・ジロー「DP12」。ボトル装飾は2人の著名な金細工師の手による作品。
アンリ・ジロー「DP12」。ボトル装飾は2人の著名な金細工師の手による作品。

同社の挑戦として記憶に新しいのが、23年6月に発表された新商品「DP12」の日本先行発売である。これはグレイトヴィンテージである2012年のピノ・ノワール100%の原酒に1990年からの継ぎ足しを行ってきたリザーブワインをブレンドし、18金のオリジナルアグラフでコルク留めをしたスペシャルキュヴェ。

筆者も試飲会でテイスティングの機会を得たが、その圧倒的な複雑味とピュアさ、ダイナミズムと繊細さの妙が生み出す極上の「黄金比率」に支えられた見事な作品であった。マグナム388本、ジェロボアム(3L)192本という限られた生産本数に加え、マグナム1本143万円、ジェロボアム1本330万円(税込)という強気な価格設定も業界を驚かせた。

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