「当社は、人々の専門知識や価値観、嗜好などをこれらのモデルに組み込んでいます。単なる知識だけではなく、価値観や嗜好が重要なのです。そして、それを実現するためには、米国市民を代表する人々の関与が欠かせません」と彼女は語る。
OutlierはScale AIの事業の中核を成すプラットフォームの1つだ。Scale AIは、昨年9月に年間経常収益（ARR）が100億ドル（約1兆4700億円）に達したと発表したが、Outlierの貢献度は明らかにしていない。同社は、2023年11月にそれまで生成AIオペレーション部門を率いていたジュを、Outlierの初代ゼネラルマネージャーに任命した。彼女の役割は、成長を続けるこの部門を管理し、ますます注目を浴びるこのプラットフォームを適切に運営することだ。
「私たちは、AIの未来を形作っています。そして、AIの普及が進むにつれて、ここで行うタスクがAIの発展において極めて重要な役割を果たすことになります」とジュは語った。
時給4500円の仕事
Outlierの契約ワーカー（タスカーとも呼ばれる）は、平均して週に約6時間働く。しかし、最も活動的なタスカーの1人であるカレン・ハート（46）のように、週に20時間働く人もいる。アラバマ州在住の彼女は、パートタイムのデータアナリストであり、疫学の修士号を持っている。ハートの主な業務は、言語モデルの回答を評価し、その理由を説明することだ。
契約ワーカーは、個別のプロジェクトごとに雇われ、時給制またはタスクごとの報酬を得ている。Scale AIによると、報酬は契約者の資格や地理的要因、顧客の需要に応じて変動する。ハートは通常、時給25ドル（約3800円）から30ドル（約4500円）程度を稼いでいるという。
タスカーの仕事は、外部の人々から誤解される場合も多い。オニールがAIを訓練する仕事をしていると話すと、大抵の人は驚くという。さらに、この仕事について少し知っている人であっても、多くの場合、それはとても孤独な作業のように思いがちだ。
しかし、ハートはOutlierの内部のチャットルームで、仲間たちと共に働いていると感じている。ここでは、契約ワーカーたちが交流し、タスクに関する質問をしたり、Scale AIの担当者からサポートを受けることが可能だ。「ログインした時に、知っている名前を見つけると嬉しくなるんです」とハートは言う。
「データのラベルづけ」という作業
Scale AIのデータのラベリング事業は、Outlierが始まる前から続いてきた。2017年に同社は、Remotasksと呼ばれる部門を立ち上げた。これは、主に自動運転車向けのAIモデルを訓練するための部門で、ビデオに出てくる樹木や歩行者、道路上のさまざまな物体にラベルづけをすることで、車両のコンピュータビジョンシステムがそれらを認識し、適切に反応できるようにするタスクを請け負っている。
