国内

2025.03.12 13:30

世界が注目する日本の棚田:地域発インパクトの可能性

この結果、10年間で150件の省エネ診断とその結果を踏まえた省エネ効果の高い機材が導入できたとのことである。同事例からは、「地域単位」の人間関係を大事にし、利用者(この場合は企業経営者)の置かれた立場に寄り添いながら、徹底的に結果にこだわる現場重視、執行重視の姿勢が窺える。

advertisement

以上のような事例から、「ローカルインパクト」の要素が見えてくる。1つ目は、「場所性」もしくは「地場」である。上記事例の登場人物たちに共通するのは、強烈な地場への愛だ。人は、自分が大事にしている人や場所に対して、より多くのポジティブなエネルギーを注ぐ。場所性に根差すことで、インパクトも加速するのではないか。2つ目は、「執行」だ。地域経済エコシステムの関係者が相乗作用を生みつつ、顔の見える地域ならではのきめ細かな「執行」に責任をもつ。これが、着実なインパクトにつながると思う。このほかの要素として、プロジェクトや地域単位での「健全な収支」という要素も、持続性の観点から重要と考えている。

OECDが注目した「棚田」

日本国内の「ローカルインパクト」は、海外からも注目を集める。24年2月、経済開発協力機構(OECD)が、山形県朝日町の棚田を訪問した。この背景には、加盟各国における都市と地方の経済格差、それに伴う地域社会の衰退や社会の分断といった、OECDの有する問題意識が挙げられる。
 
棚田では、大規模な圃場と比べたとき、単体での生産性向上が困難だ。そこで、朝日町の棚田では、地域文化・伝統に根差しながら、棚田を基点とした地域内外の人々の交流や、収穫したコメの高付加価値化等を組み合わせた維持がなされている。OECDの担当課長からは「農村活性化の良い事例であり、他の加盟国にも良い影響を与えると思う」とコメントがあった。地域社会のなかに棚田を位置づけることで維持につながり、ローカルインパクトを生んでいる事例といえよう。今後は、国際機関の調査をきっかけとして、共通の課題を抱えるほかの国々との間で、対話の機会も生まれてくることだろう。

現在、我々が直面する地球規模の課題に対しては、世界を舞台にした巨大なインパクトの創出が必要であり、新技術や新たな金融手法等のダイナミックな取組みも不可欠だ。同時に、「地域」にこだわり、現場で困難を解決しながら社会・環境課題に挑み続ける人々が日本各地、世界各地で活躍していることも事実だ。デジタル技術により地域と世界が直接つながり、ローカルの取組みに対する共感も世界中で同期される。

advertisement

失われた30年と言われながらも、やるべきことを粛々と実行している人達は各地に多数いる。「地場」をポジティブなエネルギーの「磁場」に変え、それぞれの「磁場」から人類の課題に挑戦する。そんな日本発「ローカルインパクト」の可能性に期待したい。


小林剛也◎内閣官房デジタル行財政改革会議事務局参事官。2003年、財務省入省。省内各部署のほか、欧州や地方(熊本、山形)などで勤務。内閣官房では、公共部門の変革に向けたスタートアップとの共創や、地方創生を担当。縄文アーティストを自称し、各地で個展等の取り組みを行う。

文=小林剛也 イラストレーション=ティム・ボーラス

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事