ドナルド・トランプ米大統領が、ロシアによる侵攻を受けて米国に避難してきたウクライナ人約24万人の一時的な在留資格を取り消すことを計画しているという。ロイター通信が6日、報じた。トランプとウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領の確執が数週間にわたり激化する一方で、トランプ政権は不法移民の国外追放に力を入れている。
ロイターがトランプ政権の高官1人と情報筋3人の話として伝えたところによると、早ければ4月にも在留資格が失効し、ウクライナ人は強制送還されるおそれがある。
この動きは、ジョー・バイデン前大統領が推進した人道的な臨時入国許可制度を通じて米国入国を認められた移民180万人余りの一時滞在資格を取り消す取り組みの一環だという。フォーブスはホワイトハウスとワシントンのウクライナ大使館に取材を試みたが、直ちに回答は得られなかった。
一時保護資格(TPS)とは何か
米国土安全保障省は、進行中の武力紛争や自然災害、伝染病など「異常かつ一時的な状況」にある国からの渡航者が安全に帰国できないとみなされる場合、その国を「一時保護資格(TPS)」の対象に指定できる。TPSで入国した外国人は米国で就労でき、強制送還の対象とならない。
バイデン政権では、ロシアがウクライナに侵攻した直後の2022年3月にアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官(当時)がウクライナをTPS対象国に指定し、今年初めに適用期限を2026年10月まで延長した。
しかし、トランプ大統領は1月20日、国土安全保障省に対して「すべてのカテゴリーにおける臨時入国許可プログラムを終了する」よう命じる大統領令に署名した。米CBSニュースはこれを受け、米国内に支援者を得て合法的に入国したキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラからの移民の一時的な在留許可をトランプ政権が取り消す方針だと政府の内部文書を引用して報じた。この方針転換の影響を受ける外国人は54万人を超える。プログラムの対象には、タリバンの支配を逃れてきたアフガニスタン人7万7000人も含まれている。
「ウクライナのための団結」方針転換へ?
ウクライナ人への一時的な在留資格の取り消しは、ウクライナからの避難民を歓迎するバイデン政権の取り組みと、国土安全保障省の「ウクライナのための団結」イニシアチブを覆す決定となる。国土安全保障省はこのイニシアチブについて、「プーチンのいわれのない不当攻撃による計り知れない悲劇と損失」に苦しんでいるウクライナの人々が米国に避難し、米国人の支援を受けて一時的に滞在できるプログラムだと説明していた。
在留資格取り消しのニュースは、トランプとゼレンスキーの首脳会談が決裂した後に出てきた最新の動きだ。トランプとJ・D・バンス副大統領は先週、ホワイトハウスの大統領執務室で、米国が進めるロシアとウクライナの和平案に異論を唱えたゼレンスキーを「無礼」だと非難した。和平交渉の加速化を図るトランプは、ウクライナを参加させずに米露間で停戦交渉の開始に合意。会談に先立ってゼレンスキーを「選挙を拒否」する「独裁者」と批判していたが、この発言は事実上撤回したとみられている。