こうしたつながりが実現できているのは、単に「仕組みがあるから」ではない。参加者同士が定期的に顔を合わせ、互いの活動や価値観を深く理解し合える「近さ」があるからこそ、自然な信頼関係が生まれ、それが継続的な連携につながっているのだ。物理的な距離だけでなく、「何かあればすぐに相談できる」「一緒に動ける」という心理的な距離の近さこそが、「人が残り、動き続ける」仕組みを支えている。
単年度で終わるのではなく、関わった人たちが新たな動きを生み出し、また次の世代へとつなげていく。この「人が残り、動き続ける」仕組みこそが、「つなげる30人」の最大の価値である。
「持続可能な地方創生」を実現するために——“次の10年”に向けた戦略とは?
以上、「つなげる30人」が大事にしてきた思想や実績を踏まえ、地方創生2.0の“次の10年”を、単なる「看板の掛け替え」に終わらせず、持続可能な地域づくりを本当に実現していくためには、何が必要か?
以上を踏まえここから、国・自治体・民間業者・そして実際に地域に暮らし、働く市民の立場、この4つの視点からそれぞれ提言をしていきたい。
1) 国は「持続的な仕組みづくり」を支援する政策設計を
国は、単なる補助金の配分にとどまらず、地域にノウハウが蓄積され、持続的に活用される仕組みづくりを支援する政策を設計すべきである。単年度の補助金事業を延長するのではなく、「地域が人材や知見を蓄積し、自走できる仕組み」をつくる支援が不可欠だ。地方創生2.0を本当に機能させるためには、この視点を政策レベルで取り入れる必要がある。
例えば、以下のような取り組みが考えられる。
・補助金の使い切りを前提とせず、「地域が自走できる仕組みを作ること」を評価する交付金設計への転換
・民間・行政・市民が主体的に協力し合えるクロスセクター連携を促進する政策の整備
▼官民共創ファシリテーターの配置:自治体と民間・市民の協働を促進する専門人材の設置
▼複数主体による共同運営の要件必須化:単独自治体・単独企業ではなく、官・民・市民の連携を前提とした事業設計の促進
▼自治体内の専門部署の設置支援:地方創生を単発事業ではなく、長期戦略として継続できる体制の整備
・3年後には外部支援が不要になることを前提としたモデル実証の推進と、地域の自立を支援する制度の確立
このような制度設計を進めることで、補助金頼みの短期的な事業から脱却し、地域が自ら動き続けるための基盤を築くことができる。地方創生2.0を「看板の掛け替え」で終わらせず、本質的な変革へとつなげるためには、国の制度設計そのものが変わることが不可欠である。