2. 「ギブ・アンド・テイク」の関係が溝をつくりだす
どちらが何をしたかを「記録」する習慣は、例えば「この前の夕食の支払いはどちらがしたか」「最後にデートに誘ったのはどちらか」を覚えておくなど些細なことから始まることが多い。だが、それはやがて不均衡や不公平感というより深い感情へと発展していく可能性がある。こうした感情が言葉にされることがなければ、静かに関係にヒビが入り、埋めがたい溝が生じてしまう。
「記録」の例をいくつか挙げる。
・「昨夜は私が皿洗いしたから、今度はあなたの番よ」などと家事や義務の分担に執着する
・「『愛している』と言うのはいつも私が先」などと愛情の大きさを測る
・「あなたの好きなコーヒーをわざわざ買って来たのに、あなたは私に『おはよう』のテキストさえ送ってくれない」などと愛情の表し方を比べる
・「この前は私が先に謝ったから、今度はあなたの番」などと謝罪について同等であろうとする
専門誌『ジャーナル・オブ・ソーシャル・アンド・パーソナル・リレーションシップス』に2019年に掲載された研究によると、自分がしたことと同様のことを相手に求める傾向の強いカップルは、行き違いがあると親密さが低下することがわかった。ギブ・アンド・テイクに注意を向けることで些細な行き違いが深刻なものになり、過剰な反応を引き起こして全体的な関係が損なわれ、満足度も下がる。
記録のサイクルから抜け出すには、考え方を変えることが第一歩となる。公平性を追い求めるのではなく、寛容であることや感情的なつながりに注意を向ける必要がある。以下、いくつかアドバイスを紹介する。
・記録するより与えることを優先させる
思いやりの行為は、義務感からではなく愛情から行われるときにより意味深いものとなる。
・欠けているものをはっきり伝える
バランスが取れていないことに相手が気づくのを待つのではなく、自分が何を必要としているかを、相手を非難することなく具体的かつ率直に伝える。例えば「参っているので、少し助けが欲しい」など。
・些細な気遣いに感謝する
感謝の気持ちは前向きな行動を引き出す効果がある。「夕食を用意してくれてありがとう」という一言で、相手は感謝されていると感じる。 感謝の気持ちがあれば、欠けているものから、すでにあるものへと注意が向くようになる。
・大局的に見る
カップルの関係は毎日、完全に平等というわけではない。 互いの思いやりと努力は時間と共に釣り合うと信じよう。例えば、相手が仕事で多くのストレスを抱えているなら、あなたが家事の負担が増えることになるかもしれない。 自分がないがしろにされていると感じるのではなく、立場が逆なら相手も同じことをしてくれるだろうと思おう。
・互いに寛大になる
「記録」は、自分のしたことが当たり前と思われたくない気持ちから始まることが多い。だが健全な恋愛関係においては、「貸し借り」ではなく与えることが愛だ。 お互いが相手に対して寛大であればあるほど、「記録」する必要はなくなる。