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経済

2025.03.07 13:30

「地域×金融×インパクト」から見る日本のインパクトエコノミー推進の萌芽

(写真左から)坂田寛之(肥後銀行)・宜保友理子(インパクトコンソーシアム)・山田尚那(八十二インベストメント)

地域インパクトの強力な推進力とは

宜保:肥後銀行は23年8月、インパクト志向の投融資活動の発展のため、国内外の金融業界全体でその量的拡大や質的向上を目指す民間主導のイニシアチブ「インパクト志向金融宣言」に署名しましたね。 

坂田:署名したのは銀行だけではありません。グループ会社の九州みらいインベストメンツや肥銀キャピタル、肥後銀行企業年金基金を含めた4社です。銀行が単独で取り組んでいては一社だけの目標を達成することばかりに目が向いてしまうと考えたためです。

地域に対して銀行が主体的にどうかかわっていくべきか。そんな視点から、中期経営計画の視野も広がりました。当期純利益や自己資本利益率(ROE)といった従来の経営指標以外に、熊本県の県内総生産(GRP)や取引先の経常利益増加率など地域やお客様に対して提供するべき価値についての目標を掲げています。 

山田:八十二銀行も、特に環境に関しては、先駆けて環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を取得したり、環境会計を導入したり、温室効果ガス排出のネットゼロを22年度に達成したりするなど、率先して取り組んできました。長野県は森林が多く、温泉地やスキー場といった観光資源で成り立つ部分も大きい。環境について意識せざるを得ません。

ただし、こうした取り組みを推進するうえで、人手や手間がかかるという現実もあります。現在は投資だが最終的には付加価値をうむという考え方が必要だと思います。今後は、インパクトに関する取り組みを進める費用も適正価格に含まれているという考え方がスタンダードになっていく可能性もあり顧客の皆様に対してもその状況に納得してもらう取り組みが必要となるのではないでしょうか。当社を含めた地域金融機関には、自分たちが率先して取り組むことで、地域の理解を深め、牽引していく役割もあると考えています。

宜保:地域社会における、インパクト・エコノミーの創成には、地域金融機関の皆様が以前から抱いていた危機感なり問題意識なりをベースとして、真摯に積み上げてきた取り組みこそ、強力な推進力になると考えています。お二人の話を伺いながら、それをさらに強固にする、次のステージに進むための萌芽を感じることができました。こうした「地域×金融×インパクト」の取り組みが増えることが、日本のインパクト・エコノミーの推進に必要なことだと思います。

山田尚那◎2006年八十二銀行入行。2021年より八十二インベストメントに出向。地場産業のひとつであるきのこに関連する事業者や観光開発に携わる事業者等を担当。エクイティファイナンスの活用事例を幅広く習得しながら、地方銀行系VCの新たな役割を模索している。
山田尚那◎2006年八十二銀行入行。2021年より八十二インベストメントに出向。地場産業のひとつであるきのこに関連する事業者や観光開発に携わる事業者等を担当。エクイティファイナンスの活用事例を幅広く習得しながら、地方銀行系VCの新たな役割を模索している。

肥後銀行◎熊本県を中心に事業を展開する地方銀行。2015年10月に鹿児島銀行と経営統合し、九州フィナンシャルグループを設立。資産規模は約13.5兆円、地方銀行で8番目の金融グループ。熊本県内外に123の店舗・出張所を構え、上海や台北にも事務所を有し、2025年に創立100周年を迎える。

インパクトコンソーシアム◎インパクト実現を目指す経済・金融の多様な取り組みを支援し、インパクト投融資の確立と事業推進を図る場として2023年11月に設立。投資家・金融機関、企業、自治体など幅広い主体が協働・対話を行うプラットフォーム。金融庁と経済産業省が共同事務局を務める。4つある分科会の1つに地域・実践分科会がある。

八十二インベストメント◎2021年設立。長野県を営業地盤とする八十二銀行が100%出資する投資専門会社。八十二サステナビリティ1号投資事業有限責任組合を運営・管理。投資分野はベンチャー、事業承継、事業再生、地域活性化が中心。運営ファンドを通じた投融資により、地域企業の持続的な発展に取り組んでいる。

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