バイデン前政権の米国はウクライナに155mm砲弾を300万発以上供与した。その多くは東部のペンシルベニア州にある米陸軍の主要な砲弾工場から直送された。この工場の155mm砲弾の月間生産数は全面戦争前には1万4000発程度だったが、新たな目標である10万発に向けて増産が進められてきた。
だが今年1月のトランプ政権発足以来、米国からウクライナへの弾薬の出荷は細っている。トランプ政権はさらに、それを完全に止めるとも脅している。これは、トランプ政権がウクライナの鉱物資源権益を強引に獲得しようとするなか、2月28日、訪米したウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領を、米国によるこれまでの援助に対する感謝が十分でないなどとして、トランプとJ・D・バンス米副大統領が記者団の面前で厳しく叱りつけたあとの動きだ。
惨憺たる首脳会談のあと、ゼレンスキーがショックもあらわにホワイトハウスを立ち去ると、欧州などの支援諸国の首脳はすぐさま、ウクライナの戦時指導者であるゼレンスキーへの支持を表明した。「ウクライナはドイツを頼ることができるし、欧州を頼ることができる」。ドイツのオラフ・ショルツ首相はソーシャルメディアにそう投稿した。
この言葉は本当だろう。とくにショルツが退任し、先月の総選挙で勝利した野党を率いるフリードリヒ・メルツを首班とする新政権の樹立が見込まれるだけになおさらだ。メルツは欧州を、独裁に傾斜しつつある米国への依存から脱却させ、戦略的な「自立」に導く決意を示している。
ドイツはこれまでにウクライナに155mm砲弾を40万発強供与しており、2025年を通じて供給を維持していくため国内での生産を拡大してもいる。さらに重要なのは、ドイツの兵器メーカーであるラインメタルがウクライナ企業と提携し、ウクライナに155mm砲弾の工場を新設することだ。新工場は2026年から、砲弾を年に数十万発生産すると見込まれる。
また、この新工場の生産計画数に比べるとはるかに小規模なものの、ウクライナにはすでにノルウェーの支援で155mm砲弾を生産している工場もある。