コンサートや演劇のチケットの購入は、9割近い人たちがオンラインで購入している。しかし、オンラインチケットを利用する人は5割に満たない。それは、ペーパーレスにできない紙ならではの価値によるものだ。
サントリーホールをはじめ全国に文化施設を展開するサントリーパブリシティサービス(SPS)は、2024年にクラシック音楽、舞台芸術の有料公演を鑑賞したことがある1036人を対象に、公演鑑賞前後の行動や意識変化についてアンケート調査を行った。そこからわかったのは、紙には紙のよさがあるということだ。
公演に関する情報を集める方法は、20代ではSNSがもっとも多く、年齢が増すごとに減っていく。それに対して、メールマガジンの利用は20代では少なく、高齢になるほど増えている。しかし、ポスターやチラシを見るという人はどの年代でもほぼ同じ割合で存在した。
劇場内に貼り出されたポスターなどには「視覚的インパクトを通じて来場者に共通の体験を生み出す要素」があり、瞬時に広範囲に情報を届けるデジタルツールと異なり「劇場ならではの空間体験を支えている」とSPSは見ている。
チケットの購入は、9割近い人たちがオンラインで行っている。今やそれが当たり前だ。しかし、オンラインチケットの利用者の割合は、コンビニで発券される紙のチケットの利用者とほぼ同じの4割強。紙のチケットを選ぶ人に理由を聞くと、「記念になるから」がもっとも多い。興味深いことに、20代の人たちの6割がその理由をあげている。SPSはこれを、「紙チケットは従来のデジタル体験とは異なる価値を持つ存在として認識されている」と分析する。
また、オンラインチケットはスマホの電池切れや接続トラブルなどが心配だからという人と、友人や家族にチケットを渡すときに紙のほうが便利だからという人が3割強とほぼ同数で2位となった。代表者が購入したチケットをグループに配るとき、オンラインチケットと紙のチケットとではどちらが手軽かを考えれば、現状ではだんぜん紙だ。このように「デジタルと紙の融合は現代の劇場体験において欠かせない要素となっており、今後も集客や体験価値向上を支える重要な手段としてさらに成長を続ける」だろうと同社は予測している。
コンビニ発券のチケットも、あの味気ない新幹線の乗車券みたいなやつではなく、プレイガイドで買うあのきれいなチケットみたいになってくれたなら、紙チケット派としては非常にうれしい。