「大企業のインパクト化」の動き
世界最大の資産運用会社のブラックロックをはじめ、米ウェリントン・マネジメント、英M&Gインベストメンツ、第一生命などがインパクト投資として投資をしている日本の上場企業がある。中古戸建て住宅の買い取り・再生販売を手掛けるカチタスだ。同社は、日本に数多く存在する「空き家」を再生しながら「地域を活性化」し、顧客には「新築の半額程度」の価格でよりよい住まいを提供する会社だ。時価総額も約1700億円(1月8日時点)にのぼる。
現在、日本には約900万件の空き家が存在し、社会問題化。同社が仕入れる住宅の約8割が空き家だ。また、地域社会への貢献として、年間約170億円超を地域の工務店へ発注し、地方都市を中心に年間約2万人に対して住まいを提供。ロジックモデルをはじめインパクト開示を先駆的に行っており、インパクトを定量化して開示しているのも特徴だ。
空き家を1物件再生する経済的インパクトの金額は1600万円、1物件の受益者数5.8人であり、1万件販売時の経済的インパクトと受益者数は1600億円、5万8000人に上る。地方で雇用創出し、買い物やサービス利用により地域での消費を促すことで、直接的な雇用で年間約20億円、取引工務店等による間接的な雇用から年間100億円近く地域活性化のインパクトを創出しているという。カチタス代表取締役社長の新井健資は、「地域に貢献したいという強い思いで事業を進めてきました。インパクトという言葉を聞いた時、『我々の事業そのものではないか』と思い、インパクト開示をはじめ、新たに自分たちの事業価値や存在意義を再定義しました。我々が事業成長することがインパクトの創出につながるからこそ、共感する仲間や地域の工務店の皆様をはじめ、一緒に『三方よし』で取り組んでいきたい」と話す。
インパクトは企業活動のあらゆる側面から生じうる。企業活動が生む利益以外の社会的影響を価値として見える化する「インパクト会計」についても、先駆者のエーザイをはじめ、SOMPOホールディングス、日清食品ホールディングス、ヤマハ発動機、KDDI、積水化学、オムロンをはじめとする日本を代表する企業たちが行っている。「日本はインパクト会計の導入、普及、関心が高い先進国とも言える。人や社会を大切にする企業ほど高い評価につながるため、それらを大事にしてきた日本企業にとっては馴染みやすい」と話すのはKIBOW社会投資・投資プロフェッショナル/公認会計士の五十嵐剛志だ。インパクト投資の要である測定から派生したこの流れは「ポストESG」とも呼ばれている。ESGが企業に非財務情報開示を求め、投資家に判断材料を提供することに対し、インパクトはポジティブなインパクトを測定・開示し、目標設定をする企業の能動的な取り組みだからだ。


