つまり、ここには「レアアース」という文言が一切盛り込まれていなかったのだ。
外交やエネルギー問題などに強みを持つ民間シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のグレースリン・バスカランは「これは米国のファンドではない。ウクライナを投資対象とする将来の経済開発に向けてのツールだ」と説明した。「このファンドは、まだ初期段階で、多くの詳細が詰められていないが、復興に向けた資本を国際的に集めるための重要な焦点になり得る」と、彼女は指摘した。
一方、米財務長官のスコット・ベセントは先日ゼレンスキーと会談し、財務省が戦後のウクライナにおける新たな石油、ガス、鉱業契約を精査し、汚職を防ぐ役割を担うことになると述べていた。
鉱物資源は本当に採掘可能か?
しかし、ウクライナの鉱物資源の多くは未開発のままであり、採掘には大規模な投資が必要になる。そのため投資家たちは、このファンドへの「収益の50%」の拠出が具体的に何を意味するのかを明確にしたがっている。
ヒューストン大学のエネルギー経済学講師エド・ハースは、このプロジェクトから得られる収益に、「没収的なロイヤルティ」が課されることに警鐘を鳴らている。彼は、ミシガン州が鉄鉱石の採掘税を引き上げた際に、鉱山業者がカナダに移ったことや、カナダのアルバータ州が石油のロイヤルティを引き上げた際に、掘削業者が施設を米国のノースダコタに移したことを指摘した。
ロシアによる2014年の侵攻前に、石油大手のシェブロンとシェルはウクライナのシェールガスの埋蔵量の探査を進めていたが、テキサスやペンシルベニアでの投資よりも収益性が高くならない限り、彼らがフラッキングによる採掘を開始することはないだろう。そして、50%ものロイヤルティが課されるのであれば、その実現の可能性は低い。
さらに、ウクライナはいまだ戦争の真っ只中で、鉱物資源を開発するためには、ウクライナよりも安全な場所が他にいくらでもある。北米や南米でプロジェクトを手がける経験豊富な鉱業幹部の1人はこう語る。「世界で最も条件の良いプロジェクトでさえも、それを、安定的に稼働させるのは難しい。現状でロシアの支配下にあるドネツクやルハンスクで、それをやるのはなおさら難しい」