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食&酒

2025.03.20 14:15

福岡から世界の「Goh」へ 福山剛シェフの王道ではない道

Gohの福山 剛シェフ

そんな頃、年に2〜3回、中国から訪れる客人があった。インバウンドのイの字もない頃だっが、福岡はアジア圏からはアクセスがいいし、東京、大阪に行きなれた人の中には九州の来訪頻度が高い人も増えつつあった。その人は10年ほどの来訪のあと、福山氏を飲みに誘った。

そこで「ゴウ、毎日キッチンで一生懸命頑張ることも大切だけれど、外の世界ももっと見たほうがいい。今度上海の『ウルトラバイオレット』(当時アジアベスト50で上位の常連、サプライズな料理を仕掛けることで人気を博していた)を貸し切りにするからぜひ来てほしい」と招待する。そこで初めてガガン・アナンド氏を紹介された。

しばらくしてアナンド氏が「ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ」を訪れ、たちまち福山剛という人間と料理に魅了される。「今度中国の方の誕生日パーティで『ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ』を貸し切って、サプライズでコラボレーションをしよう」と唐突に言われた福山氏は、わけもわからず、YESと頷くしかなかったという。それが記念すべき“GohGan”の1回目となった。

福山氏は一度メニューを決めたら、その精度を上げていきたいタイプ。ところがアナンド氏は翌日になると、まったく別のことを思いつく。なるべく寄り添おうと誠心誠意尽くすも、振り回されっぱなしでへろへろだったという。

「ところがガガンは、年3回はコラボをしようとものすごく積極的。そんな口約束、実現するわけもないだろうとたかをくくっていたのですが、数カ月後、本当にメールがきたのです。今度はタイでやろうと。驚くと同時に、何か大きな波に飲み込まれていくのを感じました」

翌2016年、「アジアのベストレストラン50」に31位にランクインした。誰も知らない福岡の店の登場に、どういうことだ、と東京のフーディも大騒ぎ。「おそらく、中国の方がパーティに連れてき人たちが、私を後押ししてくれたのだと思います」と福山氏は回想する。

その後の、何度とないアナンド氏とのコラボレーションの中で、学んだことがあるという。「料理って自由でいいんだということです。彼はとにかく発想力豊か。そんな素材を組み合わせるんだと、何度驚かせられたことか。けれど、お客さんは皆『こんな料理食べたことない』と大騒ぎ。サプライズで喜ばせることの大切さを間近で見て学びました」。

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文=小松宏子

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