生殖機能への影響
精巣内には血液を介して侵入する有害物質の作用から細胞を保護する血液精巣関門があるが、マイクロプラスチックはこの関門を通過し、炎症を引き起こすおそれがある。一部のアントシアニンに、血液精巣関門のバリア構造を強化して精子数などを改善する効果があることが分かっている。
マイクロプラスチックに暴露したマウスを使った実験では、アントシアニンが精子の質を改善し、精巣の損傷を軽減することが示された。また、男性ホルモンのテストステロンを産生するライディッヒ細胞を保護する効果もみられた。
女性の場合、マイクロプラスチックに含まれる特定の化学物質が卵巣組織に炎症を起こし、女性ホルモン値を低下させるおそれがある。マウス実験によれば、アントシアニンには卵巣組織を保護してエストロゲンなどのホルモン値を回復させる効果があるようだ。
研究チームは今回発表した論文が、マイクロプラスチックの悪影響に対抗しうるフラボノイドの可能性を解明し、その効能への認識を高める一助になることを期待している。と同時に、アントシアニンが実際にマイクロプラスチックとどのように相互作用するのかを正確に理解するには、さらなる研究が必要だとも警告している。
この研究でレビューの対象となった研究は齧歯類を使った実験に基づいており、人体で必ずしも良い結果が得られるとは限らないからだ。とはいえ、アントシアニンがマイクロプラスチックの人体への有害な影響を軽減する「天然化合物の探索」において「有望な候補として浮上している」のは事実である。
中国・西安交通大学の機関誌Journal of Pharmaceutical Analysisに掲載された論文に、研究チームはこう記している。「これらのメカニズムを理解することで、(マイクロプラスチックなどの)環境汚染物質からヒトの健康な生殖機能を守るためのアントシアニンを活用した治療介入の開発につながる貴重な知見が得られるだろう」