経済・社会

2025.02.27 19:00

全滅を待つだけか クルスク州に再び現れた北朝鮮軍兵士の運命は

Photo by Kim Jae-Hwan/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

前述の幹部は「あれだけの被害を出せば、戦闘任務を切り替えて、監視や障害物除去などの任務を与えるのが普通」と語る。ただ、北朝鮮兵士はロシア軍との間で言葉の問題に苦しんでいる。ロシア軍の戦術も理解していないようで、「何を監視すれば良いのか」「どうやって伝えればいいのか」という問題に苦しむだろう。戦車壕などの障害物除去の任務はできないことはないが、ウクライナ軍も障害物で足が止まったロシア軍や北朝鮮軍に火力を集中させる戦術を取っているはずだ。障害物を除去する兵士は格好の標的になり、多くの死傷者を生むことになるだろう。同幹部は「結局、後方からの補給物資の輸送を人海戦術で実施させるくらいしか、使い道がないのではないか」と語る。

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それでも、ウクライナ側の報道を見る限り、北朝鮮軍はなお小規模とはいえ、ウクライナ軍への突撃を止めていないようだ。米人権団体「ヒューマンライツ財団」がウクライナ軍を通じて入手した、死亡した北朝鮮兵士が所持していた文書「第94旅団の戦闘経験と教訓」には、「我々の命を犠牲にしても、尊敬する最高司令官(金正恩氏)の戦闘命令を遂行する」という記述があった。

財団のリ・ソンミン局長は「北朝鮮は肉体だけではなく、精神的な準備も重視する。小隊単位から隊長のほか、政治指導員、保衛指導員が配置される。3人がお互いに監視し、議論しながら部隊を運営することで、金正恩のために命をかけようとする仕組みになっている」と語る。北朝鮮軍兵士だった脱北者は「戦闘で死ねば共和国英雄だが、逃げようとすれば反逆分子になる」と語る。

付け焼刃で、無理やりとしか見えない北朝鮮軍兵士らの行動は、戦闘での合理性よりも、北朝鮮の金正恩氏にどうやって報告するかを重視した結果と言えるだろう。金正恩氏が25日に訪れた姜健総合軍官学校は、2013年12月に叔父の張成沢元国防副委員長が公開処刑された場所でもある。朝鮮中央通信が配信した写真では、大勢の北朝鮮軍兵士らが歓喜の表情で金正恩氏に拍手する様子が写っていた。張成沢氏は今頃、雲の上でこの茶番劇とも言える様子を冷笑しているだろう。

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文=牧野愛博

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