本物のリーダーは、価値観について語るだけではなく、それを実践する。従業員ハンドブックに経営理念を記載したり、オフィスの壁に掲示したりするのは簡単だが、日々の行動に反映されなければ意味がない。
企業において「真の文化的変革」を起こす方法
自分の価値観を明確にすることは、真の自己認識のために不可欠であり、パーソナルブランディングのプロセスにおける重要なステップだ。リーダーがコアバリューを意識し、一貫してその価値観に沿って行動するとき、従業員もそれに気づく。そのときこそ、真の文化的変革が起こる。
こうしたことを正しく行なっている企業では、意思決定が明確な原理原則に導かれ、長期的な戦略が軌道に乗り、社員がやりがいを感じるような職場を作り出している。このことは、特に今、重要だ。Gallup(ギャラップ)の調査によると、今現在の組織内のエンゲージメントレベルは、ここ10年で最低という水準になっているからだ。
しかし、価値観で社員を導くとは、実際にはどういうことなのだろうか? リーダーが年に一度だけ価値観に言及するのではなく、日常のビジネス上の意思決定の一部にするにはどうすればいいのだろうか?
まずは、価値観を戦略的資産として扱うことから始めよう。リーダーシップを説明責任のあるものにし、価値観をイノベーションの基盤として活用するのだ。以下では、リーダーが価値観を組織に根付かせ、永続的なインパクトを生み出す方法を紹介する。
1. 価値観を、競争上の優位性にする
価値観は、形だけあればよいというものではない。価値観は雇用を生み出し、経営戦略に影響を与え、日常業務を導くものでなければならない。リーダーたちが、それを単なる理想ではなく競争上の優位性として捉えたとき、優秀な人材を引きつけ、信頼を育み、長期的な成功を維持できる組織が構築される。
サティア・ナデラの指揮下に入ったマイクロソフトを例に取ってみよう。同氏がCEOに就任したとき、マイクロソフトは時代遅れの考え方にとらわれていた。ナデラは、小手先の調整ではなく成長マインドセットを提唱し、社員に実験や共同作業を奨励して、問題へのアプローチの仕方を再考させた。
こうしたシフトは、全社に通達がなされたことで起こったものではない。ナデラ自身が、こうした価値観を体現していたからこそ起こったものだ。彼は、好奇心や開放性、学習へのコミットメントを自ら示し、組織もそれに従った。