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2025.02.22 08:00

「教師なし機械学習」で金融詐欺を撲滅するセキュリティ企業、米DataVisor 

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たとえば、ある詐欺グループが銀行のデータにアクセスし、特定の被害者のプロファイルを見つけたとする。それが「その銀行の古くからの顧客で、高額な取引履歴があり、デジタル取引に不慣れな高齢者」だった場合、彼らはその顧客にギフトカード購入の詐欺を仕掛ける。また、この場合、奪いとる金額を被害者の通常の取引額以下に抑えれば、銀行の不正検出システムを回避できる可能性が高い。
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しかし、DataVisorの教師なし機械学習は、これらのターゲット顧客の間に瞬時に相関関係を見出し、人間が指示せずとも、リアルタイムで詐欺の拡散を阻止することができるのだという。

シエとユーは、自分たちのアルゴリズムが優れていると主張するのに十分な、この分野における最先端の知見を持っている。シエは北京大学のコンピューターサイエンス学部を首席で卒業した。一方、ユーは上海の復旦大学で学部生のときにマイクロソフトリサーチアジアの創設メンバーのもとでインターンを経験し、それがきっかけで博士課程に進んだ。

2人は共に、最先端のコンピューターサイエンスを学ぶのであれば米国が最適だと考え、大学院への進学のために渡米した。その後、グリーンカードを取得し、マイクロソフトに残って働き続け、最終的に米国市民となった。
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そして、マイクロソフトに在籍した7年間で2人が書いた数十本の論文は、業界の内外から大きな注目を集めた。シエとユーのチームは、検索ボットのトラフィックを検出する新たな手法や、不正なウェブ広告スキームの特定方法など、さまざまなテーマで共著論文を執筆した。

「アイデアを形にする」ために起業

「私たちはたくさんのアイデアを持っていましたが、それを他の誰かが形にするのを待っていただけでした。もっと現実に即したことをやりたいと思ったのです」とシエは語る。

そんな中、彼女たちの論文を読んだフェイスブックやピンタレスト、イェルプなどの企業の研究者から、データ分析の課題について協力を求められることも増えてきた。こうした流れの中で、2人は2013年に起業を決意した。

シエとユーは、シリコンバレーの人脈と自分たちの貯金を元手に事業を始めた。初期の顧客には、ユーザーによる口コミの不正利用を防ぎたかったイェルプや中国のマッチングアプリのMomo(陌陌)がいた。

DataVisorは、2015年のシリーズAラウンドで1450万ドル(約22億円)の資金を調達し、ハイテク企業向けのセキュリティソリューションというニッチな市場を開拓していった。2018年には、セコイア・チャイナの主導で4000万ドル(約60億1600万円)を調達し、2019年にはさらに1200万ドル(約18億円)の資金を確保し、PitchBookによるとこの時点での評価額は3億9000万ドル(約586億円)に達していた。

しかし、その水面下でDataVisorが対象とする市場の規模は縮小しつつあった。その当時の同社は、企業が新規ユーザーの獲得のために提供するリワード(報酬)の不正利用を防ぐことに注力していたが、こうした報酬制度の効果が思わしくなかったために、企業はこの取り組みを減らすようになった。一方で、金融機関が急速にデジタル化を進める中で、DataVisorはターゲット顧客を金融分野にシフトした。
次ページ > DataVisorのツールの魅力

編集=上田裕資

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