次なる時代のキーワード
藤吉:ちなみに阿部さんの中で今、次のキーワードは、見えてきているんでしょうか。
阿部:あえて言うならば「グローバルに展開する日本」というイメージです。これから日本の企業がリードする新しい時代が始まると思う。僕はずっと「日本の〝ソシオ・エコノミックモデル〟が世界を変える」ということを言ってるんです。
藤吉:ソシオ・エコノミックモデルというのは?
阿部:直訳すれば「社会経済モデル」ですね。社会のシステムを織り込んだ経済のシステムとでもいえばいいでしょうか。より具体的に言うと、日本の製造業における「多品種・少量・高品質製品の大量生産」システムがそれに当たります。
藤吉:なるほど。
阿部:次なる時代について、僕がずっと考えているのは「多極化する世界」ということなんです。歴史を振り返ると、1945年に第二次世界大戦が終結してから世界は統合へと向かい、それが結実するのが1989年の天安門事件とベルリンの壁崩壊です。
これによって東側の陣営がアメリカを盟主とする西側の市場に組み込まれ、産業と資本主義の統合、ドルを基軸通貨とする「グローバル市場経済」のプラットフォームが確立されて、その中心で覇権を握ったのがアメリカです。端的にいうとアメリカは儲からない製造業は「外注」して国内でモノを作らなくなり、一番儲かるソフトウェアばっかりやり続けた。
藤吉:その結果、”マグニフィセント・セブン”とも称されるシリコンバレーの巨大IT企業に富が集中したわけですよね。
阿部:マグニフィセント・セブンの一角、米半導体大手のエヌビディアの社員は今、約3万人ですが、その時価総額は300兆円です。これは日本のGDPの半分にあたります。人類の歴史上、かつてないほどの富の偏在が起きています。
超富裕層以外の大多数のアメリカ国民の間で不満が蓄積していき、その受け皿となったのがトランプ氏でした。トランプ氏が再び大統領になったことで、「統合の時代は終わり、分断の時代が始まった」と僕は認識しているんです。


