だが子育てとは、ただ与えて、守り、しつけることだけではない。成績や才能よりも子どもの将来を形成するとあるスキルを教えることでもある。そのスキルとは感情的知性だ。
感情的知性は学ぶものであり、子どもが自然に身につけるものではないために見過ごされている。親自身が自分の感情を理解してコントロールする方法を学んでいなければ、そうすることを子どもに教えるのは難しい。
では、感情的知性のある子どもを育てる親は、どのようなアプローチを取っているのだろうか。子どもの感情面のウェルビーイングの基盤となる、研究に裏づけられた子育て方法を4つ紹介する。
1. 子どもに自分の感情を認識させる
子どもが友だちと口げんかして泣きながら帰宅したとしよう。 反射的に「腹を立てず、無視しなさい」と言いたくなるかもしれないが、それは子どもの感情を無視することになる。 感情的知性のある親は子どもの感情を抑えつけるのではなく、子どもが自分の感情を認識して言葉で表現できるよう導く。この手法は「感情のラベリング」と呼ばれ、精神的苦痛を減らし、感情の制御を改善することが示されている。専門誌『エモーション・レビュー』に掲載された研究では、感情に名前をつけることで脳の扁桃体が活性化するのを抑制し、強い感情をコントロールしやすくなることがわかった。
科学誌『プロスワン』に2022年に掲載された別の研究では、感情のラベリングは、即座に行う場合、時間を置いてから行う場合のいずれでも感情のコントロールに役立つことがわかった。だが、感情の強さによってラベリングの効果に幅があることも明らかになった。ラベリングは感情が激しいときに最も効果的で、感情がさほど強くない場合、時として苦痛を増幅させる可能性があるという。
つまり、親は毎回急いで子どもに感情のラベリングをさせる必要はない。子どもの状態を見て、準備ができたときにラベリングに誘導するといい。
子どもが自分の感情をよく理解できるよう手助けする方法は以下の通りだ。
・日常のさまざまな場面で感情のラベリングを行う
本を読んでいるときや映画を観ているときに「あの登場人物はどんな気持ちだと思う?」と尋ねてみる。・「なるほど」と認める
例えば「イライラしているんだね。そのことについて話したい?」と声をかけて子どもの感情を認めてあげる。・考えられる感情を複数示す
子どもが自分の感情をうまく表現できないときは「悲しい?それともイライラしている?」と表現を絞る手助けをしてあげる。・気持ちが落ち着いているときに練習する
感情が高ぶっていないときに自分の感情を理解する練習を行い、サポートする。・感情表現の手本を示す
「計画通りにいかなくてがっかりしているけど、明日もう一度やってみる」「このニュースには本当にワクワクする!次に何が起こるか、期待が持てる」など、どのように感情を表現するのかを手本を示す。子どもが自分の感情を認識できるようになれば、次のステップは親にすべてを頼らずに困難を乗り越える方法の学習だ。