2025.02.21 11:30

ゴールデンビザの廃止に向かうEU諸国、制度を維持する国に申請が殺到

ギリシャ・サントリーニ島(Shutterstock.com)

ポルトガルのゴールデンビザ制度

ポルトガルのゴールデンビザ制度は12年に運用が始まって以降、70億ユーロ(約1兆980億円)を超える資金が集まっている。申請者の大半は、中国、ブラジル、米国の出身者だ。

ポルトガル政府は23年、不動産投資によるゴールデンビザ制度を廃止したが、現在も対象となるファンドへの50万ユーロ(約7800万円)以上の金融投資などを通して居住権を取得する選択肢が残っている。

この制度により、同国では人口構成に大きな変化が表れている。ポルトガルの外国人人口は18年時点から倍増し、現在では100万人に達し、全人口の10分の1を占めるようになった。

同国ではこれまで、ゴールデンビザ申請の処理に長い時間がかかっていた。手続きが義務付けられている生体認証登録の予約を何年も待っていた申請者らによる訴訟を受け、ポルトガル政府は手続きの迅速化に乗り出した。処理が滞っている約4万5000~5万件の申請に対処するため、同国の統合移住亡命庁(AIMA)は、これまで紙で行っていた手続きの電子化を進めている。これにより、現在はオンライン申請が可能になり、承認の迅速化も期待されている。新たな電子化システムでは、生体認証登録の予約が30~90日以内に自動的に設定されるほか、英語、スペイン語、フランス語の書類であれば、翻訳も不要となる。

その他のEU諸国のゴールデンビザ制度

EU諸国が投資による居住権付与の扉を相次いで閉ざしつつある中、ハンガリーはこの流れに逆行する形で、17年に廃止したゴールデンビザ制度を24年7月に再開した。同国の制度には、不動産ファンドへの投資、不動産の購入、教育分野への100万ユーロ(約1億5700億円)以上の寄付という3つの選択肢がある。同ビザの保持者は家族を帯同することもできる。

17年にゴールデンビザ制度を導入したイタリアでは、国内の企業への最低25万ユーロ(約3900万円)の投資で2年間の居住権が与えられる。ビザ保持者は家族を帯同することができ、優遇税制の対象にもなる。

物議を醸すEU各国のゴールデンビザ制度

ゴールデンビザの保持者は、他の種類のビザで滞在している外国人に義務付けられる言語能力や滞在期間などの要件を回避できることが多い。こうした制度は不公平であり、富裕層だけに利益をもたらしながら、汚職やマネーロンダリング(資金洗浄)、脱税につながると批判する声もある。一方、賛成派は、同制度は外部からの投資を呼び込み、外国資本の注入によって経済が潤うと主張している。

18年時点では、EU加盟国の半数以上が何らかの形でこうしたビザ制度を設けていた。ところがその後、複数の国々で問題が発覚したことから、欧州議会は加盟国に対し、申請者にその国との実際のつながりを示す証拠や新たに市民権を得た者の名簿の公開を求めるなど、規制を強化するよう要求している。

EUのゴールデンビザ取得者が、移動の自由を含む欧州共通の特権を悪用する恐れもある。欧州議会は「EU市民権の直接的または間接的な販売を伴うような国家の制度は、欧州市民権の概念そのものを損なう」ものだとして、投資の見返りに外国人に市民権を付与する制度に強い懸念を表明している。

このように、ゴールデンビザ制度は欧州で引き続き議論を呼んでいる。スペインの制度廃止はEU全体の傾向を示しているが、同制度を維持している国では依然として需要が大きい。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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