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宇宙

2025.02.21 10:30

2032年12月に地球に衝突?小惑星「2024 YR4」の被害想定と核爆弾で軌道変更できない理由

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「2024 YR4」が地球に衝突したらどうなる?

英ダラム大学物理学部のリチャード・J・ウィルマン博士は「記録が残っている歴史上、最も状況が類似しているのは1908年のツングースカ大爆発だろう」と述べている。「直径約100mの隕石が地球大気圏に突入して空中爆発し、シベリアの森林2000平方kmが壊滅的な被害を受けた」──この被害面積についてウィルマン博士は、ロンドン首都圏の外環をつなぐ環状高速道路M25の内側とほぼ同じだと指摘する。

「2024 YR4」は石質(S型)小惑星とみられているが、このタイプは地球に衝突する前に爆発する傾向がある。主成分が硬い物質の場合、それが地表に衝突してクレーターを形成する可能性がある。「小惑星の種類にもよるが、目安としては、クレーターの大きさは衝突物体のサイズの約20倍だ」とウィルマン博士は言う。「つまり直径100mの小惑星なら、クレーターの直径は2kmになる」

米アリゾナ州にある隕石衝突クレーター「アリゾナ大隕石孔」(Shutterstock.com)

米アリゾナ州にある隕石衝突クレーター「アリゾナ大隕石孔」(Shutterstock.com)

「2024 YR4」をめぐってはさまざまな想定がなされており、ほとんどは地球に衝突しないというものだ。とはいえ、天体衝突から地球を防衛するプラネタリーディフェンス(スペースガード)の分野では、小惑星の直撃や空中爆発による衝撃波で都市が破壊されたり、津波が発生したりした場合など、あらゆる被害シナリオを検討する必要が生じている。衝突地点が砂漠だったり、海洋上空で爆発したりすれば、大きな影響は出ないとみられている。

宇宙機の体当たりで軌道変更は可能か?

NASAは2022年9月26日、プラネタリーディフェンスの世界初の技術実証ミッションとして、探査機を小惑星ディモルフォスに体当たりさせて軌道を変える「二重小惑星進路変更実験(DART)」に成功した。「2024 YR4」に対して同じ対策はとれるだろうか。

2028年になれば、できるかもしれない。ただし、もし「2024 YR4」が岩塊の集積によってできたラブルパイル(瓦礫)天体であれば、探査機を衝突させることで状況が悪化するおそれがある。

地球近傍小惑星(NEO)を監視している欧州宇宙機関(ESA)のNEO調整センター(NEOCC)のマネジャーで、イタリア・フラスカーティにある欧州宇宙研究所(ESRIN)で小惑星の早期検出ミッション「NEOMIR」の研究に携わる科学者のルカ・コンベルシは、こう指摘する。「衝撃を与えた瞬間にバラバラに崩壊し始め、直径40~50mの岩の塊だったものが無数の小さな隕石に分裂するかもしれない。そうなったら、細かい破片のすべてがどうなるかを予測することは不可能だ」

「2024 YR4」の軌道変更に核爆弾は使えない?

核爆弾を使って小惑星の軌道変更を試みるというのは、最後の手段であり、最も効率が悪く、最も危険な解決策だ。

「核爆弾には2つの問題がある。まず第一に、この手法は実証実験が一度も行われていない」とコンベルシは説明した。政治的な影響も大きい。「DARTのように宇宙機を打ち上げて失敗しても、不運だった、仕方ないで済むが、核爆弾を搭載して打ち上げた機体が高層大気圏で爆発したら、どうなるだろうか? リスクを負う以上、そのリスクは労力に見合うものでなければならない」

forbes.com原文 1, 2

翻訳・編集=荻原藤緒

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