「2024 YR4」が地球に衝突したらどうなる?
英ダラム大学物理学部のリチャード・J・ウィルマン博士は「記録が残っている歴史上、最も状況が類似しているのは1908年のツングースカ大爆発だろう」と述べている。「直径約100mの隕石が地球大気圏に突入して空中爆発し、シベリアの森林2000平方kmが壊滅的な被害を受けた」──この被害面積についてウィルマン博士は、ロンドン首都圏の外環をつなぐ環状高速道路M25の内側とほぼ同じだと指摘する。「2024 YR4」は石質(S型)小惑星とみられているが、このタイプは地球に衝突する前に爆発する傾向がある。主成分が硬い物質の場合、それが地表に衝突してクレーターを形成する可能性がある。「小惑星の種類にもよるが、目安としては、クレーターの大きさは衝突物体のサイズの約20倍だ」とウィルマン博士は言う。「つまり直径100mの小惑星なら、クレーターの直径は2kmになる」

宇宙機の体当たりで軌道変更は可能か?
NASAは2022年9月26日、プラネタリーディフェンスの世界初の技術実証ミッションとして、探査機を小惑星ディモルフォスに体当たりさせて軌道を変える「二重小惑星進路変更実験(DART)」に成功した。「2024 YR4」に対して同じ対策はとれるだろうか。2028年になれば、できるかもしれない。ただし、もし「2024 YR4」が岩塊の集積によってできたラブルパイル(瓦礫)天体であれば、探査機を衝突させることで状況が悪化するおそれがある。
地球近傍小惑星(NEO)を監視している欧州宇宙機関(ESA)のNEO調整センター(NEOCC)のマネジャーで、イタリア・フラスカーティにある欧州宇宙研究所(ESRIN)で小惑星の早期検出ミッション「NEOMIR」の研究に携わる科学者のルカ・コンベルシは、こう指摘する。「衝撃を与えた瞬間にバラバラに崩壊し始め、直径40~50mの岩の塊だったものが無数の小さな隕石に分裂するかもしれない。そうなったら、細かい破片のすべてがどうなるかを予測することは不可能だ」
「2024 YR4」の軌道変更に核爆弾は使えない?
核爆弾を使って小惑星の軌道変更を試みるというのは、最後の手段であり、最も効率が悪く、最も危険な解決策だ。「核爆弾には2つの問題がある。まず第一に、この手法は実証実験が一度も行われていない」とコンベルシは説明した。政治的な影響も大きい。「DARTのように宇宙機を打ち上げて失敗しても、不運だった、仕方ないで済むが、核爆弾を搭載して打ち上げた機体が高層大気圏で爆発したら、どうなるだろうか? リスクを負う以上、そのリスクは労力に見合うものでなければならない」
(forbes.com原文 1, 2)