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2025.03.20 08:30

業界トップで平均年収2000万円超。浜松でIT技術者たちがつくる理想郷

小寺敏正|エリジオン 代表取締役会長、最高経営責任者

デジタル赤字拡大への危機感

安定経営の背景には、独立性を死守する非上場という選択、東京一極に流されない地方都市という足場、発注を受けるソリューション型の研究開発、パッケージ販売後も年15%のメンテナンス料が永続するビジネスモデル、そして何より、数学力や論理力をベースとした圧倒的な技術力にある。

加えて、世界の競合を引き離す強みは、かゆいところに手が届く日本式のカスタマーサービスにもあると小寺。「同じ大根を相手の好みによって千切りや輪切り、時には大根おろしにする要領でサービスに徹する。そういう日本人的な創意工夫と思いやりに外国人は驚き、感動してくれる。プレゼン力と英語力で負けても、愚直に積み上げた技術と気配りで培った信頼は、そう簡単には追いつかれない」。

売上高は約30億円、別に米欧の現地法人約10億円。そんな順風のなかにあって、悩みもある。日本の頭脳流出だ。入社試験で優秀な学生を数人ずつ採用するが、そうした人材にはGAFAなど海外の触手も伸びてくる。「技術者なら年俸4000万円から8000万円。マネジャークラスなら1億2000万円という声も聞く。人材流出を防ごうにもマネーゲームでは太刀打ちできない。日本のデジタル赤字はすでに5.5兆円。近い将来、10兆円になる。標準規格を海外勢に握られるということは、相手の言い値で買わされることを意味し、これ以上負け続ければ取り返しがつかない」。

日本人がつくったソフトが世界中で使われる現実をつくりたかった、という夢を実現した小寺はこの先何を目指すのか。「労働集約型の製造業だけでは危ない。知的産業が生み出す付加価値で、日本がもっと稼げるようにならないと。大上段かもしれないが、3D分野で世界一の企業を目指したい」


小寺敏正◎エリジオン代表取締役会長、最高経営責任者。東京大学工学部を卒業後、ヤマハ発動機に入社。30歳で同僚と独立、起業。1999年に2度目の起業としてエリジオンを創業。地域貢献を重視し、地元養護施設の催しに毎年社員と参加、浜松市内のひとり親家庭への寄付は累計7.7億円に上る。福井県大野市出身。

SUPPORTER’S VOICE

新野俊樹|東京大学生産技術研究所副所長教授

エリジオンは1990年代から3Dプリントにかかわった先見に明るいソフト開発企業です。2014年からは、手づくりされていた義足ソケットを3Dプリントする国家プロジェクトにおいて専用CADを開発され、技能者の従事時間を4分の1にできることを示されました。

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文=秦 融 写真=小田駿一

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