今回のシンポジウムのように、アーティスト事務所の社長とファンが直接対話する機会は極めて稀だ。ボーイズグループの「BE:FIRST」や「MAZZEL」が所属するBMSGの代表取締役CEOのSKY-HIも、2023年、24年とビジネスカンファレンスを開催しているが、こちらはメディアや取引先など関係者向けだ。
ファンとの双方向のコミュニケーションという意味では、timelesz(旧:Sexy Zone)の菊池風磨が、新メンバー募集オーディション「timelesz project」について、自身のInstagramでファンからの質問に答えている例がある。審査員も務める菊池は、「“お気に入り”メンバーを通過させているのか」といった候補生や審査に関する踏み込んだ質問にも答えた。
しかし、SKY-HIも菊池も、経営者やプロデューサーという立ち位置ではありながら、現役アーティストとして活動する「プレイヤー」でもある。一方の崔は、あくまで「裏方」。自身の“集客力”はないはずであり、かつ事前に「アーティストのサプライズ出演はない」と告知されていたにもかかわらず、シンポジウムには2300人ものファンが集まった。それは、アーティストを応援するファンが、運営側に対して透明性や説明責任を求めていることの表れとも言えるだろう。
ファンからの率直な意見も受け止める「覚悟」
シンポジウムはJO1との共演も多い、お笑いコンビ・はんにゃの金田哲の軽快なMCで幕を開けた。崔は人前でのスピーチが苦手であること、日本語が不慣れであることなど、ユーモラスな注意事項が伝えられ、会場の笑いを誘う。(左から)崔社長、金田哲
登壇した崔はまず、LAPONEの理念とグループ運営方針を説明。「オーディション番組からデビューするメンバーは、最初は“誰でもない”存在。しかし、彼らは夢を与えるアーティスト、“誰か”へと成長していく。LAPONEの理念は、この『NobodyをSomebodyにする』こと」。アーティスト育成への責任の重さを強調し、「今売れているから良いのではなく、5年後、10年後も活躍できる基盤を築くことが重要」と語った。
シンポジウム前半で、いきなりアーティストの給与や住居事情といった踏み込んだ内容にも言及。崔は「給与は1年目から固定給に加え、インセンティブやボーナスを支給。住居は、私自身も住みたいと思える部屋を用意しています」と語り、セキュリティ、プライバシー、休息環境の確保を重視している点を強調。JO1、INI、DXTEENには同じ建物内に個別の部屋、ME:IとIS:SUEには同じマンション内の個室を用意していると説明した。