生き残っていた「小さな恐竜」が発見されたようなもの
ノーブルは、シドニーのロイヤル植物園にサンプルを持ち込んだ。詳しい調査にあたった植物学者ウィン・ジョーンズとジャン・アレンは、自分たちが観察しているものの重要性に気がついた。彼らは、当時ロイヤル植物園の園長だったキャリック・チャンバースに知らせ、こうしてチャンバースがウォレミマツの発見を宣言した。「植物学にとって、地球上にまだ生き延びていた小さな恐竜を見つけたようなもの」だと、彼は例えた。恐竜時代の木が、元気に生きた姿で発見されることはそうそうない。ウォレミマツは、地球のはるかな過去と直接つながっており、植物の進化と強靭さについて、貴重な洞察をもたらしてくれる。
ウォレミマツの野生群生は、わずか100本の木からなることがわかった。何よりもまず、生存を確実にするための方策がとられた。自然保護官はすぐさま、群生地への立ち入りを制限し、木々が撹乱を受けないように手を打った。群生地の正確な位置は機密として守られ、ひと握りの研究者だけが訪問を許可された。
病原体の持ち込みを防ぐため、厳格なバイオセキュリティ手順が導入された。特に警戒されたのは、疫病菌の1種(学名:Phytophthora cinnamomi)だった。土壌由来のこの致命的な病気が侵入すれば、はかない群生は一掃されかねなかった。訪問を許可された者は例外なく、感染リスクを最小化するための汚染除去プロセスを経ることを義務づけられた。
