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経済・社会

2025.02.18 17:15

87年前よりひどいミュンヘン会談、猛威を振るうトランプ台風

ヘグセス国防長官(Photo by Andrzej Iwanczuk/NurPhoto via Getty Images)

仮に、トランプ政権が主張する「ウクライナ領土の現状固定とNATO加盟断念」が関係国に認められたとしても、「ロシアが再び侵略を始めるかもしれない」という懸念は残る。第2次世界大戦勃発当時のポーランドはフランスや英国と相互援助条約を結んでいたが、ドイツがポーランドを侵略しても、フランスと英国はドイツに宣戦布告はしたものの、武力介入しなかった。庄司氏は「結局、自国兵士を他国の防衛に派遣するハードルに加えて、国益が最も重要。歴史的に、条約上の応援義務を発動して武力行使がなされた例はほとんどない」と指摘する。仮に欧州軍がロシアとウクライナの停戦を監視するとしても、核保有国のロシアが再び侵略を開始した場合、ロシアに宣戦布告するかどうかは見通せない。

プーチン大統領がヒトラーのように欧州全体の占領を目指すとは考えにくいが、フィンランドやスウェーデン、ポーランド、バルト3国などは、NATO加盟国ではあるものの、「次は我が身か」と緊張するだろう。庄司氏は「ミュンヘン会談の1年後に結ばれた独ソ不可侵条約でドイツがソ連に接近したように、自分の身を守るために、ロシアに接近しようとする国が出てくるかもしれない」と語る。

国際連合の常任理事国であるロシアが堂々と他の主権国家に侵攻し、小国が犠牲になるという先例を作れば、第2次世界大戦後に確立された、いかなる国の領土保全や政治的独立に対する武力による威嚇や武力の行使も慎まねばならないとの国際連合憲章の原則が揺らぐことは間違いない。トランプ政権は「米国第1主義」を掲げるが、こうした原則が揺らげば、戦後秩序の恩恵を最大限に受けて来た超大国としての地位が揺らぐこともまた、間違いないと言えるだろう。

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文=牧野愛博

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