クルスク州の突出部はウクライナにとってロシアに対する取引カードのひとつだ。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は先週、「われわれはある領土を別の領土と交換する」と述べ、クルスク州への侵攻はそこでの占領地をいずれウクライナのロシア占領地と交換するためだったとあらためて認めている。
とはいえ、米国のドナルド・トランプ大統領がウクライナとロシアの交渉の主導権を性急に握ろうとしており、ウクライナが有利な条件を得られるのかは不透明だ。
仮に停戦が実現したとしても、主に米国製の兵器を装備する第47機械化旅団向けのものを含め、米国によるウクライナ軍への継続的な支援がなければ、その停戦は脆弱なものになり、短期間で終わる可能性がある。トランプはゼレンスキーに対し、米国による過去の援助への対価と今後の援助の条件として、ウクライナの5000億ドル(約76兆円)相当のレアアース(希土類)権益を米国に与えるよう要求している。
ロシアの侵略者と米国の恐喝者の間で板挟みになっているゼレンスキーは、綱渡りのような際どい外交を強いられている。いまのところ支援と鉱物を交換する取引への署名を避けているものの、より広範な安全保障協定の一環として米国と何らかの経済取引に応じる可能性は排除していない。ゼレンスキーは米国との取引に関して「ウクライナの利益が確実に守られるようにするために、まだ作業を続ける必要がある」との認識を示している。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者であるTatarigamiは「ゼレンスキーはこれまでのところ交渉に非常にうまく対処している」と評価している。「間接的にゆすりを受けているにもかかわらず、それに屈せず、資源を無駄に差し出していない」
そして、血の飛び散るクルスク州の雪原では、第47機械化旅団がゼレンスキーの外交のためにさらに時間を稼ぎ、数百平方kmのロシア領という最高の交渉材料を確保している。
(forbes.com 原文)