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働き方

2025.02.24 17:00

心理学者が明かす「特別待遇」であなたを縛るキャリアの代償

Shutterstock.com

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人生を振り返って、かつて自分が望んでいたものを今すべて手にしているという人もいるかもしれない。いい給料に充実した福利厚生、そして多くの人が憧れる安定性など。一見、成功しているように見える。だが、どこかに満たされない思いがある。仕事にやりがいを見出せず、かつて感じていた刺激もない。それでも退職という選択肢はない。

これは俗にいう「黄金の手錠」だ。会社につなぎ留めようと雇用主が従業員に提供する特別待遇のことで、時間をかけて小出しにされることが多い。特別待遇の中身は高い給料やストックオプション、ボーナス、割増の退職金など。すべて受け取るには退職せずに勤め続けなければならない。こうした手厚い待遇は経済的な安定をもたらす一方で「身動きが取れない」という感覚を生み出す。仕事がやりたいものでなくなっても、離職するのはリスクが高いと感じさせる。

特別待遇が心地よいのは否定できないが、何かが欠けているという感覚も強まる。そうした感覚はただのストレスで、自分は恵まれていると感謝すべきであり、離職なんて無謀だと自分自身に言い聞かせる。

だが、それでキャリアは成功しているのだろうか。経済的に困ることなく暮らしているだけではないのか。黄金の手錠(特別待遇)から自由になるというのは単なる離職ではない。ウェルビーイングや本当のやりがいを追求する自由を取り戻すことだ。

黄金の手錠で縛られることで、以下のようなウェルビーイングへの影響が考えられる。

1. 働く意義を見失う

立派な役職や高給、雇用の安定はその人のアイデンティティや自己肯定感と深く結びついていることが多い。 給料だけではない。 役職にともなう周囲からの評価や社会的地位もある。 退職は自分自身の一部を失うような感覚をともない、次のような悩ましい問いにぶつかる。

・この役職を失った自分は一体何者なのか
・役職を失っても成功していると見られるだろうか
・これほど待遇のいい仕事に再び就けなかったらどうなるだろうか

専門誌『BMCヘルスサービス・リサーチ』に掲載された研究では、職業上のアイデンティティが仕事の満足感や燃え尽き症候群(バーンアウト)に大きな影響を及ぼし、仕事を続けるかどうかを左右することが示されている。

仕事が自分の望む職業上のアイデンティティと一致している場合、人は充実感を感じ、仕事に熱心に取り組む傾向にある。だが、仕事と求めているものに隔たりがある場合、満たされない感覚やストレスが増大し、退職の可能性が高くなる。

これは、周囲からの評価や長く貢献しているかどうかで成功が測られる職業では特に難しい問題だ。自分の仕事を愛しているからではなく、その地位にともなう尊敬やアイデンティティを失うことを恐れて黄金の手錠でつながれた仕事に留まっているのかもしれない。
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翻訳=溝口慈子

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