ヘルスケア

2025.02.18 09:30

脳内には「スプーン1本分」のマイクロプラスチックが蓄積 認知症にも影響か

Getty Images

だが、研究者らは、マイクロプラスチックは主に食物、特に肉類を通じて体内に取り込まれると考えており、実際、肉類には分解されたポリマーが高濃度で含まれていることを発見している。カンペン教授は、畑にプラスチックで汚染された水をやることで、土壌にプラスチックが蓄積されるとみている。そこで育てた作物を家畜に与え、その排泄物を肥料として畑に戻しているため、マイクロプラスチックの「生物濃縮(訳注:食物連鎖の過程で、体外に排出されにくい化学物質が体内に蓄積していくこと)」のような状態に陥っているのかもしれないとの見方を示した。

マイクロプラスチックは人間にとって有害なのか?

体内に蓄積されたマイクロプラスチックは有害なのか、そうだとすれば、どのような害を及ぼすのかはまだ分かっていない。だが、研究に参加した専門家らは、マイクロプラスチックが脳の中に蓄積していることに強い危機感を抱いている。

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今回の研究では、認知症の脳には正常な脳より多くのマイクロプラスチックが含まれていることも明らかになった。しかし、その脳に蓄積したマイクロプラスチックが認知症を引き起こしたのか、それとも認知症による脳の血流の変化を反映しているのかは分かっていない。

プラスチック自体は不活性物質だと考えられており、人工関節のような医療用途に幅広く利用されている。このため、研究者らは、マイクロプラスチックに含まれる化学物質ではなく、むしろマイクロプラスチックの物理的な存在に危険性があるのではないかと疑っている。

カンペン教授は、マイクロプラスチックが毛細血管の血流を阻害しているのではないかと考え始めていると言う。同教授は「これらのナノ物質が脳の軸索間の結合を阻害する可能性がある。あるいは認知症に影響するタンパク質凝集の種となる可能性もある」としながらも、現時点では解明できていないと述べた。
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マイクロプラスチックが人間に害を及ぼすのか、そうであればどのように害を及ぼすのかを特定するためには、さらなる研究が求められる。現段階では、カンペン教授は今回の研究結果が、人間の脳内にかなりの量のプラスチックが蓄積しているという事実の警鐘となることを望んでいる。同教授は「『私の脳には大量のプラスチックが含まれているが、まったく気にならない』と言う人間にはまだ1人も出会っていない」からだと結んだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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